2023年は薬剤師の世界でこの話題を避けて通ることはできないでしょう。
そう、〝外部委託〟です。
賛成・反対色々な声を聞いてきましたが、当初から私個人は明白な賛成や反対の意見は持ち合わせておらず、〝条件付き賛成〟というスタンスをずっと取り続けてきたのは、何度かPDXニュースでも触れたとおりです。
〝条件付き〟というくらいですから、ある制限下での運用をイメージしていて、今のところはその制限案は2点あり、1点は全く触れられておらず、もう1点はその姿を使いにくく変容させてしまっているのが現状です。
前者は受託薬局の〝経営〟に新自由主義的母体を入れないこと。薬の供給という国の重要インフラを担う組織に何よりも先に〝利益〟を優先する過度な儲け主義を含めないという点でした。この点は国民医療の一翼を担うという観点から考えてのことですが、視点を変えれば外国資本NGという条件も相応しいと思います。
後者は受託薬局の〝規模〟に関する制限です。将来、既存の薬局間での委受託を超えて、受託専門のファクトリー系大型セントラル薬局が出現することを見越してのこと。対物作業は集約大型化こそ生産効率が上がるのは事実なのですが、何分、事は国民医療を司る事業。過度な大型化は自然・人工に関わらず災害リスクを大きくし過ぎます。
今のご時世だと、海外からのサイバーテロだって予め検討しておく必要もありますし、施設自体が堅牢にセキュリティを担保出来たとしても、当該地域全体の電力を落とす類のサイバーテロだって技術的にはあり得る。対物業務は集約で効率を高めますが、逆に集約で国民医療のリスクを同時に高めるというわけです。
この点については、現段階では〝距離制限〟に姿を変えてしまっていて、本来私が提唱した〝規模制限〟とは趣旨が異なってしまっています。行政管区での制限だと現場の運用には不便をかけるケースが生じます。早めの段階で適正と思われる〝規模制限〟の議論が行われることを望みます。
以上のような2つの制限案に加えて、現行の議論で個人的に意見が異なるのは、錠剤の一包化だけに制限している点。こちらは逆に制限しない方が良いと考えています。現場作業を安心安全に行うために最も必要なコンセプトは〝シンプル・イズ・ベスト〟。ひとつの処方内で作業ごとに委託可否を区分する方が面倒なうえ、委託した場合の後の突合が生じるなど、フローが複雑になればミス誘発の確率も高めてしまいます。
よく言われますが、外部委託は対物作業効率化のための手段のひとつ。万能でないのは仕方ないですが、俯瞰した目で見えてくるリスク管理を制限事項に、現場レベルの目線で過度に複雑なフローにしないこと。このふたつの〝目〟が大切ではないかと考えます。
これまで講演などで多くの薬剤師さんに尋ねてきた外部委託への賛否では、賛成・反対が5%ずつ、条件付き賛成が90%というのが相場でした。最近、この尋ね方を変えて、単純に賛成・反対の2択にしたところ、ほぼ95%が賛成との回答を得ました。条件付き賛成だった方はほとんどが「基本的には賛成だけど、適正な条件や環境を整えて欲しい」という方向性の感覚なのかも知れません。
来年以降は、本稿で触れたようなテーマもさることながら、前回整理された対物業務と対人業務との区分けをもとに、予算のウェート配分を変化させていくなど、経済的な視点の議論も活発になっていくのではないでしょうか。薬剤師バリューがより発揮される環境構築を望みたいと思います。
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