なぜ、あの日、自分は自衛隊医官として派遣された聖路加国際病院で、多くの負傷者がサリンによる中毒であることを診断でき、その初期治療に硫酸アトロピンとパムを使用しないとならないと即座に聖路加の先生方に具申できたのか?
悲惨な地下鉄サリン事件では、多くの尊い命が奪われ、多数の方々が深刻な後遺症に苦しむこととなりました。しかし、この事件からは大切な教訓も得られたのです。
事件当日、地下鉄の現場では混乱が極まっていました。しかし、偶然にも自衛隊の若手医官だった青木先生が、ちょうど一週間前に受けた試験でサリンの知識を得ていたおかげで、早期にサリンが原因と気づくことができたのです。
もちろん、当時はまだ若手であり、あくまでも応援という立場。被害者が搬送された先の医師たちから最初は疑われましたが、しぶとく説明を続けました。そして、対特殊武器衛生隊から送られてきたサリンの治療マニュアルを見て、ついに現場はサリンが原因であることを確信したのです。
この迅速な対応により、多くの命が救われたと言われています。もし、このように偶然の幸運があったおかげで、サリンの知識を持つ医官がいなければ、被害はさらに拡大していたかもしれません。
この経験から以下の点を学ぶことができます。
「役に立たない」と決めつけず、広く知識を身につけることが重要です
いつ、どのように、その知識が役立つかわかりません。自分の知識を積極的に発信し、他者を説得する力を身につけましょう。周りの反対にめげず、しぶとく主張し続けることが大切です。
自分の専門分野以外の知識にも目を向けましょう
今回の場合、自衛隊の対特殊武器衛生隊の知識が、民間医療機関で役立ちました。
基礎知識を常に復習し、知識を新しく保ち続けることが大切です
サリンの知識は試験の一週間前に学んだばかりでした。
医療従事者としての使命は、命を守ることです
そのためには、広く知識を持ち、積極的に発信し、常に学び続ける姿勢が求められます。
この事例が教えるのは、「役に立たない」と安易に決めつけることの愚かさです。医療人として必要になるかもしれない知識を、つい否定的に見るのは危険でです。地下鉄サリン事件のように、予期せぬ事態が「来週にも」起こり得るのです。テロだけではありません。例えば自然災害でも同じです。この悲惨な事件から得られた教訓を胸に刻み、一人ひとりが尊い命を救うための備えをしっかりと持ち続けましょう。
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