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薬局DXニュース解説

2024.12.23

電子処方箋で重大不具合! - 処方薬が別の薬剤に化けるシステムエラー発覚 全国の医療機関で電子処方箋発行を一時停止へ

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患者の命に直結する深刻な事態が、電子処方箋システムで発生していることが判明した。医師が処方した薬が、薬局のシステム上で全く異なる医薬品として表示される不具合が7件報告され、厚生労働省は全国の医療機関に対し、電子処方箋の発行停止と緊急点検を要請した。処方箋の電子化によって医療安全が脅かされるという、医療のデジタル化における最悪のシナリオが現実となった格好だ。

厚生労働省は2023年1月から運用を開始した電子処方箋システムにおいて、医師が指示した処方薬と異なる医薬品名が薬局側のシステムで表示される重大な不具合が7件報告されたことを受け、2024年12月19日、全医療機関に対して緊急の一斉点検実施を通達した。この事態を受け、厚労省は12月20日から24日までの5日間、全国の医療機関における電子処方箋の発行を一時停止する異例の措置を講じることを決定した。

今回の不具合は、医療機関が独自に付番した仮コード(ダミーコード)の誤用に起因するものとされているが、この問題の本質は医薬品コードの標準化が不十分な現行システムの構造的欠陥にある。医療情報システムの専門家からは、統一された標準コードの実装と標準マスタの一元的配信の必要性が以前から指摘されていた。
薬剤師の皆様  電子処方箋システムにおける緊急確認事項
現在、電子処方箋システムで医師の処方意図と異なる医薬品名や用量が表示される重大な不具合が報告されています。患者の安全を守るため、以下の点について特に慎重な確認をお願いします。

■ 調剤時の確認ポイント
医薬品コードの不一致により処方意図と異なる医薬品が表示される可能性があります。薬局システムの医薬品マスターとの整合性を必ず確認してください。特にダミーコードが使用されている場合は、細心の注意を払って確認を行ってください。

■ 疑わしい場合の対応
処方内容に少しでも疑問や不明点がある場合は、必ず処方医に直接確認してください。従来の紙の処方箋以上に慎重な確認が必要です。

患者の生命に関わる可能性のある重大な事案です。通常以上の注意と確認をお願いいたします。
出典:公益社団法人日本薬剤師会 緊急通達より
現在の電子処方箋システムでは、YJコード、レセプト電算コード、一般名処方コードの3種類のコードが併用されており、この複雑性が医療機関や薬局での設定ミスを誘発する要因となっている。システムの運用責任を現場に転嫁する現在の対応は、根本的な解決には至らないとの指摘が専門家から相次いでいる。

2024年11月時点で電子処方箋を発行している医療機関は2,539施設、月間処方箋総数約7,500万枚のうち電子処方箋は約11万枚(約0.15%)に留まっている。厚労省は25日以降、システム点検が完了した医療機関のみに電子処方箋の発行を認める方針を示している。

この事態は、医療のデジタル化における標準化の重要性と、システム設計段階からの安全性確保の必要性を改めて浮き彫りにした。今後は単なる運用面での対策に留まらず、医療情報システムの構造的な改革が求められる。

医療情報システムの専門家は、今回の事態を受け、医薬品コードの完全な標準化と、全国規模での統一的なマスター管理システムの構築を改めて提言している。患者の安全を最優先とする医療システムの在り方について、根本的な見直しが必要な時期に来ているといえる。
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