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薬局DXニュース解説

2024.08.08

厚労省、処方箋の保存期間を5年に延長へ - 電子化促進が狙い

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厚生労働省は、調剤済み処方箋の保存期間を現行の3年から5年に延長する方針を固めました。この変更は、電子データでの保管が容易になったことを受けてのものですが、見ようによっては紙の処方箋の保管負担を増すことで2023年に運用が始まった電子処方箋の普及を後押しする狙いもあるようです。

厚生科学審議会での議論

2024年7月25日に開催された厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会では、調剤済み処方箋と調剤録の保存期間について議論が行われました。厚労省は以下の理由から、保存期間を5年に延長する提案を行いました。

1.電子媒体での保存や電子処方箋の活用により、保管が容易になった
2.5年間保存する医師・歯科医師の診療録との整合性を図る必要がある

この提案に対して、委員からおおむね異論は出ませんでした。医薬局の担当者は、「十分な準備期間を設け、現場の負担を考慮しながら(移行を)進めていく」と説明しています。

法改正へ向けた動き

厚労省は、2025年の通常国会で薬剤師法の改正を目指しています。保存期間の改定は、1960年の薬剤師法制定以来となります。
現行の薬剤師法では、薬局に対して処方箋と服薬指導の内容などを記した調剤録の保存を義務付けています。これは、一定期間医療記録を残し、調剤後も医師や患者が確認できるようにするためです。

電子化の進展

従来は紙での保管を前提としていたため、保存期間を3年に限定していました。しかし、現在は処方箋などをスキャンして電子データで保存する方法も広がっています。これを踏まえ、処方箋や調剤録の保存期間を医師のカルテと同じ5年に延長する方針です。

電子処方箋の普及促進

厚労省は、保存期間の延長により電子処方箋の導入が進むことを期待しています。電子処方箋システムには、すでに処方箋情報を5年間保存する機能が備わっています。
電子処方箋には以下のような利点があります。

1.患者の同意を条件に、他の医療機関が処方した薬の内容も確認可能
2.危険な薬の飲み合わせを防止
3.全国の薬の流通状況の把握に活用可能
4.個人を特定しない形でのデータ集計により、全国と地域別の薬の使用量などをリアルタイムで確認可能
5.製薬会社の生産計画などへの活用

課題と目標

しかし、電子処方箋の導入は現在伸び悩んでいます。2023年6月末時点の導入率は、薬局で37.7%あるものの、診療所では3.3%、病院に至ってはわずか1.7%にとどまっています。厚労省は2025年3月までにほぼ全ての施設での導入を目指していますが、システム改修費用や資格取得などが課題となっています。
この法改正により、電子処方箋の普及が加速し、医療の質の向上と効率化が進むことが期待されます。
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