加算の一本化がもたらす「全落ち」リスク
これまでの制度では、後発医薬品調剤体制加算(最大30点)と地域支援体制加算(最大40点超)はそれぞれ独立して算定できた。後発率が低くても地域支援体制加算だけは届け出られるという「保険」があったわけだ。
今回の改定では、地域での医薬品供給を通じた適切な医療提供体制の構築を促進する観点から、地域支援体制加算の要件が見直され、後発医薬品調剤体制加算が廃止された。 新たな地薬体加算は5段階(加算1〜5)の階層構造になっており、最下位の加算1(27点)が全区分の必須土台となった。この加算1の施設基準に「後発品調剤率85%以上」が含まれており、これを満たさない限り加算2〜5は一切算定できない。
旧制度における後発加算3の要件は90%だったが、それは「より高い点数を取るための条件」にすぎなかった。新制度では85%が「加算全体を維持する最低条件」へと格上げされた。実質的な要求水準は緩和されたように見えて、達成できなかったときのペナルティははるかに重くなったと理解すべきだ。
月間処方箋数が500枚規模の薬局であれば、地薬体加算の喪失は月数万円から十数万円規模の減収に直結する。都市部の面対応薬局(門前以外)では後発率を引き上げにくい構造的課題もあり、東京都内では現行の地域支援体制加算算定薬局のうち約14%が新制度下での算定継続困難という試算もある。
加算1に求められる「安定供給体制」の中身
後発率以外にも、加算1には医薬品安定供給体制に関する複数の施設基準が設けられた。計画的な調達・在庫管理の実施、他薬局(同一グループ外)への分譲実績、供給不安時の患者案内と処方医への照会体制、そして重要供給確保医薬品の1か月分程度の実在庫維持などが主な要件だ。
特に「分譲実績」は見落とされがちなポイントである。近隣の独立系薬局との相互在庫共有ネットワークを持っていない薬局は、今からでも構築に着手する必要がある。主に後発医薬品において不安定な供給が発生することが課題となっており、医療機関および薬局において追加的な業務が生じている状況を踏まえ、医薬品の安定供給に資する体制について新たな評価が行われた。 卸に依存した急配体制や過剰返品慣行の見直しも明示的に求められており、在庫管理の姿勢そのものが問われる設計になっている。
後発率を上げる実践的アプローチ
後発率シミュレーションをまだ行っていない薬局は直ちに着手すべきだ。計算基準は規格単位数量ベースで変わらないため、処方頻度の高い長期収載品の上位5〜10品目を洗い出し、後発品への切り替え余地を可視化するところから始める。
処方医への働きかけにはトレーシングレポートを活用した一括提案が効率的だ。患者への説明強化では店頭・院内掲示に加え、個別の口頭説明を組み合わせる。在庫面では後発品を優先仕入れに切り替え、先発品の在庫をスリム化することで、自然と比率が改善される薬局も多い。
経過措置の1年間を有効に活用する
2026年3月31日時点で旧後発医薬品調剤体制加算(加算1〜3)を届け出ている薬局は、2027年5月31日まで後発率85%以上とみなされる経過措置が設けられている。この約1年間は新体制への移行準備に充てられる貴重な猶予だ。
ただし、経過措置が「猶予」であって「免除」ではないことは言うまでもない。2027年6月以降に加算ゼロという最悪のシナリオを避けるために、今すぐ後発率の実態把握と改善計画の策定に入ることが求められる。
1,000点という新評価が開く収益化の扉
今回の改定が薬局にとって逆風一色かというと、そうではない。2026年度診療報酬改定では、服用薬剤調整支援料2が調剤報酬でも最高水準となる1,000点に設定され、令和9年(2027年)6月1日から算定可能となる。その狙いは、単なる残薬整理ではなく、服用薬を継続的・一元的に把握し、薬剤レビューを実施したうえで主治医へ文書で提案することだ。
算定要件は、6種類以上の内服薬を服用している患者に対して、かかりつけ薬剤師が薬剤レビューを実施したうえで主治医へ文書提案を行うことだ。算定は6か月に1回、かかりつけ薬剤師1人あたり月最大4件まで認められる。月4件の算定だけで4,000点(約4万円)の収益が生まれ、複数のかかりつけ薬剤師を擁する薬局ではさらに大きな収益インパクトが見込める。
日本薬剤師会の岩月進会長は今回の改定を「対患者業務に評価がシフトした」と総括し、この支援料を「総合的に評価したうえで医師に情報提供を行う点数として大切に育てていきたい」と述べている。
新設加算の組み合わせで収益を底上げする
地薬体加算の構造変化による減収リスクを補うための新設評価項目も整備された。調剤時残薬調整加算は、残薬確認から処方医の指示・照会による調剤日数変更(7日分以上推奨)を評価するもので30〜50点(在宅・かかりつけ優遇)が付く。薬学的有害事象等防止加算は、重複・相互作用等で処方変更が生じた際に30〜50点が算定できる。
これらを服用薬剤調整支援料2と組み合わせて積み上げていけば、地薬体加算の減収を補填するにとどまらず、むしろ収益を上回る可能性も十分にある。調剤報酬改定により、薬局にはこれまで以上に「対物業務から対人業務へ」の転換が求められており、限られた人員で質の高い服薬指導や患者フォローを継続することが重要な鍵となっている。
管理薬剤師の専従要件も忘れずに確認を
薬機法は管理薬剤師の専従義務を定めており、複数店舗の兼務は禁止されている。2025年にはドラッグストアチェーンにおける兼務違反が発覚し、厚生労働省の監視強化が鮮明になった。ドラッグストアの調剤併設拡大に伴う薬剤師不足が深刻化するなか、自局の管理薬剤師配置が適正かどうかを今すぐ確認することを勧める。
今すぐ着手すべき3つのアクション
まず後発率の現状シミュレーションだ。直近3か月の規格単位数量ベースで後発率を算出し、85%との乖離幅を把握する。次に、在庫リストの見直しと安定供給体制の整備だ。重要供給確保医薬品の備蓄状況を確認し、分譲実績を作るための近隣薬局ネットワークを構築する。そして、管理薬剤師の専従配置確認と薬剤レビュー研修の準備だ。服用薬剤調整支援料2の算定に向け、老年薬学会JPALSなどの研修受講を計画に盛り込みたい。
2026年6月まで残り3か月を切った。経過措置の1年間は、待っているだけでは意味をなさない。薬局が地域医療の担い手として存続し続けるために、今この瞬間が行動のタイミングだ。
本稿は2026年2月13日付中医協答申および厚生労働省通知に基づく。点数・要件の詳細は厚生労働省の告示・疑義解釈資料を必ずご確認いただきたい。
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