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薬局DXニュース解説

2024.03.29

誠実な科学に対する酷評 コロナ禍で医療従事者が受けたハラスメント

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私たち医療従事者はコロナ禍にあって、誠実に新型コロナウイルスの脅威と対策を説明してきました。しかし、真剣な努力に対して私たちが受けたのは誹謗中傷、脅迫、そして時に暴力でした。

Scienceの調査で、新型コロナ関連論文の著者の38%がこの2年間で何らかのハラスメントを受けていたことがわかりました。中には死の脅しや身体的脅迫、家族への危害願望まであったそうです。単なる見解の相違を越え、私たちの命すら脅かされています。

日本では、身体的な攻撃こそありませんでしたが、X(旧Twitter)上では未だに多くのデマが流され医師アカウントに対して執拗な嫌がらせが続いています。
この調査結果は、ハラスメントが科学および関連分野に影響を与えていることを示す他の兆候とほぼ一致しています。ジュネーブに本拠を置く非営利団体「インセキュリティ・インサイト」は、新型コロナウイルス感染症に関連した身体的暴力517件を報告しており、その中には医療従事者10人が殺害され、24人が誘拐され、89人が負傷したという。
一方で、反ワクチンなどの虚偽の情報を流布し、効果のない治療法を喧伝しワクチンの誤った危険性を声だかに叫ぶことで多くの命を危険にさらしたインフルエンサーたちが富を蓄えているという皮肉な現実があります。誠実な科学は抑圧され、虚偽は広まる。この歪んだ現状に胸が痛みます。

私たちは、医療従事者として人々の健康と命を守ることを使命としています。それなのに、その努力が陰で揶揄されているのが現実です。この厳しい現況で、多くの同僚が離職やうつ病などに陥っているのを何人も見てきました。

具体的なハラスメントの内容

Science誌に具体的なハラスメントの内容が記載されていましたので、紹介させていただきます。

・殺人脅威や身体的危害の脅し
・家族への危害を願う発言
・自宅や職場への不審な物品の投げ込み
・個人情報の開示(住所公開など)
・執拗な問い合わせの嵐
・専門性や誠実性を疑う中傷
・人種、性別、性的指向などのアイデンティティーを攻撃する暴言
・サイバー攻撃
・外見を攻撃する発言
・セクシャルハラスメントや強姦の脅し

つまり、単なる批判や意見の相違を越えて、研究者個人やその家族を物理的に脅かす行為、プライバシーの侵害、執拗な嫌がらせ、人権を無視した暴言など、あらゆる形のハラスメントがあったということです。中には深刻な身体的被害や、薬物乱用、うつ病などの精神的ダメージにつながったケースも多数ありました。

科学者の人権と尊厳が踏みにじられ、研究の自由さえ脅かされている深刻な状況が改めてわかります。私たち医療従事者も人間です。このような人権侵害や行き過ぎた要求に対しては時に毅然とした対応をとる必要がありますし、管理者はスタッフを守る責任があります。

私たちは、ますます分断が進むこの社会の中で、事実と真理を貫き通さねばなりません。絶望的に見える状況かもしれませんが、一人一人の力は小さくても、全ての人の健康と尊厳を守るために着実に歩を進めていく覚悟です。嘘と憎しみに惑わされることなく、愛と勇気を持って前に進みましょう。
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