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薬局DXニュース解説

2025.09.22

Apple Watchが切り拓く血圧モニタリングの新時代 ー 光学式センサーによる慢性高血圧検出技術の医療現場への影響

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2025年9月、Appleが発表した新しいApple Watchシリーズに搭載された「高血圧通知機能」が医療界で注目を集めている。従来のカフ式血圧測定とは異なる光学式センサーを活用したこの革新的技術は、ウェアラブルデバイスによる継続的健康監視の可能性を大きく広げる一方で、日本での導入には医療機器認証という高いハードルが待ち受けている。

光学式センサーによる血圧リスク検出の技術的革新
Apple Watch Series 11、Ultra 3、SE 3に新たに搭載された高血圧通知機能は、ウェアラブルデバイスによる血圧監視分野において画期的な技術革新といえる。この機能の最大の特徴は、従来の医療機器で一般的なオシロメトリック法(カフ式)とは根本的に異なるアプローチを採用している点にある。
具体的には、Apple Watchの光学式心拍センサーが収集するデータを高度なアルゴリズムで解析し、心拍に対する血管の反応パターンを30日間にわたって継続的に監視する。このバックグラウンド処理により、慢性的な高血圧の兆候を検出した際にユーザーに通知する仕組みとなっている。

従来の血圧測定技術との差異化
現在日本で認可されているHUAWEI Watch Dなどの「ウェアラブル血圧計」は、腕にカフを内蔵し、加圧・減圧過程で動脈の振動を検出するオシロメトリック法により、収縮期血圧と拡張期血圧を直接測定している。これに対し、Apple Watchの高血圧通知機能は血圧値の直接測定ではなく、光学式センサーによる間接的な血圧傾向の検出に留まる点で明確に区別される。
この技術的アプローチの違いは、医療現場での位置づけにも大きく影響する。直接測定型のウェアラブル血圧計は診断補助ツールとしての活用が期待できる一方で、Apple Watchの機能はスクリーニングツールとしての役割により適している。

医療機器認証の課題と日本導入の展望
Apple Watchの健康関連機能における日本導入の遅れは、今回が初めてではない。心電図(ECG)機能についても、米国での提供開始から日本での医療機器認証取得まで相当な期間を要した経緯がある。
高血圧通知機能についても、光学式センサーを用いた間接的血圧リスク検出という新しい技術的枠組みのため、既存の医療機器認証制度では評価基準の策定自体に時間を要する可能性が高い。米国では今月中に150の国と地域での提供開始が予定されているが、日本での導入時期は現時点で未定である。

医療現場への実装における考慮点
医療従事者の視点から、この技術の実装には以下の点を考慮する必要がある。
まず、Appleも認めているように、すべての高血圧症例を検出できるわけではないという技術的限界がある。そのため、既存の血圧測定方法を完全に代替するものではなく、あくまで補完的なスクリーニングツールとして位置づけるべきである。
一方で、継続的モニタリングによる早期発見の可能性は、特に高血圧の自覚症状が少ない患者群において重要な意義を持つ。日常生活の中で無意識のうちに収集されるデータから健康リスクを検出する能力は、予防医療の観点から高く評価される。

デジタルヘルスの未来展望
Apple Watchが既に対応している心電図測定、血中酸素濃度測定、睡眠時無呼吸検出、不整脈通知機能に加えて、今回の高血圧通知機能が実装されることで、一つのデバイスで包括的な心血管系健康監視が可能になる。
この技術的進歩は、医療現場におけるデジタルヘルス活用の新たな段階を示している。ウェアラブルデバイスから得られる継続的健康データを、いかに臨床判断に効果的に統合していくかが、今後の重要な課題となるであろう。
光学式センサーによる血圧リスク検出技術の日本導入は、医療機器認証という制度的課題を抱えているものの、その実現は日本の予防医療体制に大きな変革をもたらす可能性を秘めている。医療従事者としては、新技術の適切な理解と活用方法の検討を今から進めておくことが重要といえよう。
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