薬局現場での具体的な変化
薬局でスマートフォン対応のマイナ保険証を導入するには、3つの重要な準備が必要です。
・現在の顔認証付きカードリーダーに対応した汎用カードリーダーの新規購入
・この汎用カードリーダーと既存の資格確認端末との接続作業
・患者が一目でスマートフォン対応薬局であることを認識できるステッカーの掲示といった受付環境の整備です。
これらの準備により、薬剤師は患者に対してマイナンバーカードか、マイナ保険証として設定済みのスマートフォンをカードリーダーにかざすよう案内することになります。従来の物理カードのみの対応から、デジタルとアナログ両方への対応が求められる転換期を迎えるのです。
薬剤師が直面する新たな課題
実証実験では興味深い結果が得られました。マイナ保険証利用者のうち、スマートフォンを使用したのはわずか0.54%でしたが、技術的な問題はほぼ発生しませんでした。しかし、患者からは「スマートフォンの初期設定が困難」という声が上がり、医療機関職員からは「来院前にマイナンバーカードのスマートフォン登録を完了してほしい」という要望が寄せられています。
薬局の現場では、患者がスマートフォンでの読み取りに失敗した場合の新しい対応手順が追加されます。患者がその場でマイナポータルにログインし、表示される保険資格情報の画面を薬剤師に提示することで資格確認を行う方法です。これにより適切な自己負担割合での会計処理が可能になります。
薬局運営への実践的な影響
日本医師会常任理事の長島公之氏が指摘するように、患者のスマートフォン設定支援を薬局窓口で行うと、薬剤師の業務負担が大幅に増加し、待ち時間の延長にもつながります。このため、患者への事前周知と準備の徹底が不可欠です。
また、スマートフォンの読み取り失敗時には、薬剤師が他の身分証明書との照合を求められる可能性もあり、これは従来業務にはない新たな確認作業となります。特に初回利用時には、実物のマイナンバーカード持参を患者に依頼することが重要な運用ポイントになるでしょう。
薬局DXの未来展望
現在のマイナ保険証利用率31.43%という数字は、まだ発展途上であることを示しています。物理的なカードを持ち歩く習慣のない患者層へのアプローチとして、スマートフォン活用は有効な手段となり得ます。
薬剤師にとって、この変化は単なる受付業務の変更ではありません。患者の利便性向上と薬局のデジタル化推進という、医療DXの最前線に立つ重要な役割を担うことになるのです。準備期間を有効活用し、患者への適切な案内とスムーズな業務フローの確立が、成功の鍵となるでしょう。
9月の本格運用開始に向けて、各薬局での準備状況と患者への周知活動が、今後の普及速度を左右することになります。薬剤師の皆様におかれましては、この技術革新を患者サービス向上の機会として捉え、積極的な取り組みを期待いたします。
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