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薬局DXニュース解説

2025.07.31

混乱必至?マイナ保険証移行の現実と医療現場への影響

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2025年7月31日、従来型の健康保険証が有効期限を迎える。これは日本の医療制度において歴史的なマイルストーンを迎えると言っていいだろう。しかし、その裏側では医療現場における深刻な課題が浮き彫りになっている。

利用率30.64%の現実が示す、保険証制度移行期の医療現場対応策
マイナ保険証の利用率は2024年6月末時点でわずか30.64%にとどまっている。この数字は、制度移行の理想と現実の大きなギャップを物語っている。厚生労働省は混乱回避のため、期限切れ保険証での受診を2026年3月末まで認めるという異例の措置を発表した。これは事実上、移行期間の大幅な延長を意味している。
マイナ保険証は窓口のカードリーダーで本人確認を行い、医師が患者の薬剤処方歴や特定健診結果などの医療情報を共有できるメリットがある。しかし、低い普及率は、患者側の不安や医療機関側のシステム対応の遅れなど、複合的な要因が影響していることを示唆している。

資格確認書の運用実態と注意点
マイナ保険証を持たない患者に対しては「資格確認書」が発行される。75歳以上の後期高齢者医療制度加入者全員には、マイナ保険証の有無にかかわらず資格確認書が送付される。国民健康保険では7月31日から順次期限を迎え、健康保険組合では12月1日が期限となっている。

ここで医療現場が注意すべき重要な点がある。資格確認書は健康保険証と同等に扱われがちだが、実際の運用では大きな違いがある。健康保険証は「記名された本人が持参している」前提で扱われるが、資格確認書は「記名された方の保険資格を記載している」だけで、持参者が本人であることを保証するものではない。そのため、医療機関窓口では別途身分証明書の提示を求める必要が生じる場合がある。

医療現場への実務的影響
この制度移行は医療現場に複数の実務的課題をもたらしている。まず、受付業務の複雑化である。従来型保険証、マイナ保険証、資格確認書という3つの形態への対応が必要となり、それぞれ異なる確認手順を要する。
さらに、高齢患者への説明負担も増大している。特に認知機能に不安がある患者や、デジタル機器に不慣れな患者への丁寧な説明が求められ、診療効率への影響も懸念される。
カードリーダーの不具合やシステムトラブル時の対応も重要な課題だ。マイナ保険証が読み取れない場合の代替手段や、患者への適切な説明が必要となる。

今後の展望と対応策
2026年3月末までの移行期間中、薬局では柔軟な対応が求められる。期限切れ保険証での受診も認められているが、これは一時的な措置であり、長期的にはマイナ保険証への完全移行を見据えた準備が必要だ。また9月にも開始されるというiPhoneなどデジタル化したマイナ保険証の受付のためのオンライン資格確認等システムの改修も急がねばならない。
調剤現場としては、スタッフへの十分な研修、患者への丁寧な説明体制の構築、システムトラブル時の対応マニュアルの整備などが急務となる。また、資格確認書の性質を正しく理解し、必要に応じて追加の本人確認を行う体制作りも重要である。
マイナ保険証の普及促進には時間を要するとみられるが、医療DXの推進という大きな目標に向けて、医療現場の理解と協力が不可欠である。患者の安全と医療の質を確保しながら、新しい制度への円滑な移行を実現することが、今後の医療界に課せられた重要な使命といえるだろう。
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