医療行為との境界線が明確に-DTC検査サービス規制強化「個人疾患リスク通知」は医師法違反
消費者から直接検体を受け取り健康状態を評価する「DTC検査」ビジネスに対して、新たな規制の明確化が行われました。厚生労働省と経済産業省は3月28日付けで「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」を改定し、無資格事業者による疾患リスク判定に法的制限を明確にしました。
厚労省と経産省が指針改定で線引き強化、成長拡大するDTC検査業界に影響必至
消費者から直接検体を受け取り健康状態を評価する「DTC検査」ビジネスに対して、新たな規制の明確化が行われました。厚生労働省と経済産業省は3月28日付けで「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」を改定し、無資格事業者による疾患リスク判定に法的制限を明確にしました。
この指針改定により、医師資格を持たない事業者が検査結果に基づいて個人の疾患罹患可能性を通知することは医師法違反と明確に位置づけられました。これは拡大するDTC検査市場に大きな影響を与える見通しです。
明確化された医療行為との境界線
改定されたガイドラインでは、無資格事業者が提供できるサービスの範囲が具体的に示されています。許容される範囲は検査結果の事実や医学的・科学的根拠のある一般的な基準値、検査項目に関する一般的情報の提供に限定されます。一方で、利用者個人の検査結果に基づいた疾患罹患可能性の判断や通知は医師法違反として明確に禁止 されています。
「形式的に『これは一般的な情報提供である』といった注意書きをしていたとしても、利用者の個別検査結果を用いて疾患罹患可能性を通知することは違法 」とガイドラインは明記しています。
拡大するDTC検査市場への影響
DTC(Direct to Consumer)検査は、消費者が直接事業者とやり取りして唾液や尿などの検体を提供し、遺伝子解析を含む様々な検査結果を受け取るサービスです。近年市場規模が急速に拡大する一方で、検査の品質や信頼性に疑問が持たれるケースもあることから、今回の規制明確化に至りました。
厚労省と経産省は都道府県などに事務連絡を出し、このガイドライン改定について周知を図っています。特に「利用者が、当該サービスが検査結果に基づき医学的判断をするものであるとの誤解をしないよう」事業者側に明確な表示を求めています。
日本国内のDTC検査市場の規模と薬局での取扱い注意点
市場規模の拡大
日本国内のDTC検査市場は2021年時点で約300億円規模と推計され、2025年には500億円を超える見込みです。特に、遺伝子検査や生活習慣病リスク検査などの分野で急成長しており、コロナ禍によるセルフケア意識の高まりも相まって市場拡大が続いています。
薬局での取扱い時の注意点
・検査キットを販売する際は、「医学的診断を行うものではない」ことを明確に説明すること
・管理医療機器に分類される自己採血用穿刺器具を含む検査キットを販売する場合は、薬機法に基づく販売業の届出が必要
・検査結果の解釈について質問を受けた場合、個別の疾患リスク判定につながる回答は避け、必要に応じて医療機関の受診を勧奨すること
・販売する検査キットが適法な範囲内のサービスを提供しているかを確認し、違法性の疑いがあるものは取り扱わないこと
薬局は消費者と医療をつなぐ窓口として、DTC検査の適切な活用と限界について正確な情報提供を行う役割が今後さらに重要になります。
適法となるサービスとは
ガイドラインでは適法となる例も示されています。例えば、医学的・科学的根拠があり、客観的な値(統計的に有意である一定の母集団における平均値や査読付き論文に依拠している値など)と検査結果を比較することは許容されています。
今回の指針改定は、消費者保護の観点から重要な一歩とみられますが、急成長するDTC検査業界にとっては事業モデルの見直しを迫る内容となっています。DTC検査サービス提供事業者は、医療行為との明確な線引きを意識したサービス設計が今後求められることになるでしょう。
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