日本大学の研究チームが、歯周病菌が生成する酵素がインフルエンザウイルスの感染を促進することを実験で明らかにしました。この研究成果は米科学誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー」に掲載されました。
Porphyromonas gingivalis gingipain potentially activates influenza A virus infectivity through proteolytic cleavage of viral hemagglutinin
世界で最も蔓延している感染症とされる歯周病は、日本人の歯の喪失原因の第一位となっており、特に高齢者では50%以上の方が進行性の症状を抱えているとされています。近年、口腔内の衛生状態の悪化が呼吸器感染症の発症や重症化と関連しているという報告が相次いでおり、歯周病菌とインフルエンザの関連性についても注目が集まっていました。
日本大学歯学部の神尾宜昌准教授らの研究チームは、歯周病の主要な原因菌が産生するタンパク質分解酵素に着目し、A型インフルエンザウイルスへの感染への影響をイヌの腎臓由来の培養細胞を用いて検証しました。その結果、この酵素がウイルス表面のタンパク質を切断し、細胞への感染を促進する形状に変化させることが判明しました。さらに、酵素阻害剤の添加や、酵素産生能を失わせた歯周病菌を用いた実験では、ウイルスの感染が抑制されることも確認されました。
歯周病菌が心疾患や糖尿病などに影響するという研究は古くからあります。こうした事から医科と歯科の連携強化が望まれます。しかし、従来から医科歯科連携は十分に進んでいない現状があります。そこで、かかりつけ薬局の薬剤師が重要な橋渡し役となることが期待されます。具体的には、インフルエンザ治療薬の服薬指導時に口腔ケアの重要性を説明したり、定期的な歯科受診を促したりすることで、医科歯科連携の新たな架け橋となれるでしょう。さらに、地域包括ケアシステムの中で、薬剤師が医科と歯科をつなぐ結節点となることで、より良い患者ケアの実現につながることが期待されます。