近年、我が国における市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)問題が深刻な社会課題として浮上している。この状況を重く見た厚生労働省は、2025年までの医薬品医療機器法改正を視野に入れた包括的な対策案を策定した。
特に憂慮すべき点として、若年層における市販薬の乱用傾向が顕著となっている。厚生労働省の2023年度調査によると、薬局およびドラッグストアの約20パーセントにおいて、乱用リスクの高い医薬品の販売時における法定確認事項の実施が不十分であることが判明した。この事実は、現行の管理体制における重大な欠陥を示唆している。
新たな規制案の核心は、約1500品目に及ぶ要注意医薬品の販売方法の抜本的見直しにある。具体的には、これらの医薬品を購入者の手の届かない場所への陳列義務化や、常駐薬剤師の監視下での販売体制の確立が提案されている。
さらに、年齢による購入制限も強化される。20歳未満の購入者に対しては、小容量製品1個のみの販売に制限され、身分証明書による厳格な本人確認が必須となる。20歳以上の購入者に対しても、複数個または大容量製品の購入時には同様の確認が求められる。
特筆すべきは、常習的な購入者への対応策である。購入者の特徴やイニシャルを記録し、薬剤師間で情報共有を行うことで、不適切な使用を未然に防ぐ体制を構築する。これにより、購入目的の精査がより確実なものとなることが期待される。
本規制強化は、医薬品の適正使用を確保しつつ、国民の健康被害を防止するための重要な一歩となる。しかし、その実効性を確保するためには、薬局・ドラッグストアの現場における確実な実施と、継続的なモニタリングが不可欠である。
今後は、デジタル技術を活用した薬局間の購入履歴の管理システムの導入など、より効果的な監視体制の構築も検討される必要があるだろう。オーバードーズ問題の解決には、規制強化と共に、適切な医薬品使用に関する啓発活動の推進も重要となる。
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