調査は2023年11月から2024年3月にかけて行われ、全国の薬局・ドラッグストア1,256店舗を対象に、委託業者の調査員が複数個購入を試みる形で実施された。その結果、約2割(19%)の店舗が法令で定められた購入目的の確認を行わずに複数個販売していたことが明らかになった。一方で、約半数(49%)の店舗が1個のみの販売に留め、約3割(32%)の店舗が適切に理由を確認した上で複数個販売を行っていた。
インターネット販売についても調査が行われ、140サイトのうち18%(25サイト)で確認なしに複数購入が可能であることが判明した。
この問題の背景には、医薬品医療機器法の省令により、依存性のある6成分を含む風邪薬などの市販薬については、販売数や方法が規制されているにもかかわらず、その遵守が徹底されていない実態がある。原則として1人1個の販売とし、複数個購入の際には理由の確認が必要である。また、若年者に対しては個数を問わず氏名と年齢の確認が義務付けられている。
しかし、オーバードーズによる健康被害が各地で報告されており、意識障害や呼吸困難で救急搬送されるケースも発生している。これらの事態を重く見た厚生労働省は、この調査結果を受けて対策の強化を図る方針を示している。
具体的には、薬局・ドラッグストアに対する法令遵守の徹底要請、20歳未満への規制強化(大容量製品や複数個販売の禁止など)、インターネット販売における確認プロセスの強化などが検討されている。
業界に対しては、従業員教育の徹底、販売時の確認プロセスを自動化・標準化するシステムの導入、消費者への適正使用の重要性を伝える啓発活動の実施などが提言されている。
薬局・薬剤師の皆様には、医薬品の適正使用と安全性確保の最前線として、より一層の注意喚起と法令遵守が求められている。消費者の健康を守るという使命を再確認し、社会的責任を果たすことが重要である。市販薬の販売に際しては、購入者の年齢確認、使用目的の聴取、適切な情報提供を徹底し、不適切な使用や乱用の防止に努めることが望まれる。
また、薬剤師の専門性を活かし、市販薬の適正使用に関する相談対応や情報提供を積極的に行うことで、地域住民の健康維持・増進に貢献することも重要な役割といえる。厚生労働省の対策強化の動きと併せて、業界全体で自主的な取り組みを進めることが、市販薬の安全で適切な使用につながるものと期待される。
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