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薬局DXニュース解説

2024.10.07

調剤業務外部委託の制度化へ ー 医療DXの新たな展開と課題

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厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会が2024年10月3日に開催され、調剤業務の一部外部委託の制度化に向けた議論が本格化した。この動きは医療分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要な一歩として注目を集めているが、委託範囲や患者への影響をめぐり、専門家の間で意見が分かれている。

制度化の背景と厚労省の方向性

2024年10月3日、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会が開催され、薬機法改正に向けた議論が本格化した。今回の焦点は調剤業務の一部外部委託の制度化であり、この動きは医療分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要な一歩として注目を集めている。

厚生労働省は、同省のワーキンググループの取りまとめを踏まえ、調剤業務の一部外部委託を対物業務の効率化手段として実施可能にする方向性を示した。この提案には、患者の安全確保のための基準設定や、受託側・委託側の薬局における責任の明確化が含まれている。

委託範囲をめぐる議論

しかし、委託の地理的範囲をめぐっては委員間で意見が分かれた。津田塾大学の伊藤由希子教授は、三次医療圏内に限定せず、より柔軟な仕組みを求めた。「都道府県の県境にあるような街もあるので、柔軟に検討できるような仕組みを整えてほしい」と伊藤教授は主張し、過度な制限が制度の実効性を損なう可能性を指摘した。

一方、産経新聞社の佐藤好美論説委員は、より慎重な姿勢を示した。「範囲は狭めるべきではないか」と述べ、二次医療圏内での委託を提案。さらに、「受託、委託は二次医療圏の中で行って、ネットワークの中で例えば委託する薬局には訪問するようなプランを作ってもらうなど、全体像が見えるデザインをこの先考えていっていただければ」と具体的な運用案を示した。

日本薬剤師会の森昌平副会長は厚労省の方向性案に概ね賛成しつつ、「地域への医薬品提供の確保が大前提でなければならない」と強調し、地域医療の維持を重視する立場を示した。

浜松医科大学の川上純一教授は、単なる効率化ではなく質の向上につながる基準の必要性を訴えた。「対物業務の効率化を誤って、同じ業務をより少ない薬剤師で実施できるなどと捉えられてしまうと、本当の意味で目的が達成されたかどうか、危ういように思う」と警鐘を鳴らした。

患者の視点からは、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子理事長が重要な指摘を行った。「患者にとって何がプラスになるのか、いまいち腑に落ちていない」と述べ、一包化による薬の受け取りの遅延や配送方法など、具体的な運用面での懸念を表明した。さらに、制度化後の患者の声や配送費用などの調査の必要性を訴えた。

医療DXがもたらす可能性と課題

この制度化により、医療DXの新たな可能性が開かれる。遠隔地からの専門的サポート、リアルタイムなデータ連携、AIを活用した調剤精度の向上、患者向けオンラインサービスの拡充などが期待される。しかし同時に、患者の安全確保や地域医療の維持、薬剤師の役割の再定義など、解決すべき課題も多い。

厚生労働省は年内に制度の詳細を取りまとめる予定だ。医療DXの推進と患者安全の確保のバランスをどう取るか、業界の注目が集まっている。今後の議論では、技術革新がもたらす利便性と、従来の対面での薬剤師サービスの価値をいかに両立させるかが焦点となりそうだ。
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