政府が描く医療DXの未来 ‐ 総合経済対策が示す医療分野の課題と解決策
11月22日に発表された政府の総合経済対策は、医療分野のデジタル化と効率化、そして地域医療の充実を強く後押しする内容となっています。オンライン診療の普及やデータ連携基盤の整備、薬剤師業務の改善といった具体策が打ち出され、医療従事者の負担軽減や患者の利便性向上を目指しています。また、医薬品の安定供給体制の強化やドローン配送など、革新的な取り組みも計画されており、医療の未来を形作る重要な施策となることが期待されています。
11月22日に政府が発表した総合経済対策には、医療分野や医療DX、薬剤師業務、医薬品の供給体制に関するさまざまな施策が盛り込まれています。今回の対策は、「国民の安心・安全と持続的な成長」を目標に掲げ、医療のデジタル化や効率化、地域医療の充実に向けた具体的な取り組みを強化しています。
まず、医療DXに関する政策として、オンライン診療の活用をさらに促進する方針が打ち出されました。遠隔地や高齢化が進む地域において、医療へのアクセスを改善するために、オンライン診療が果たす役割を拡大させることを目指しています。また、医療分野におけるデータ連携基盤の整備が進められ、健康医療情報の共有や連携を可能にするデジタル技術の導入が加速されます。これにより、患者の診療記録や検査データが効率的に共有され、医療現場の負担軽減とサービスの質向上が期待されています。さらに、デジタル田園健康特区の推進により、救急救命士の役割拡大や医療データの地域間連携が進み、地域医療の強化が図られます。
薬剤師に関連する施策としては、調剤業務の一部を委託可能にする特例措置が全国で展開される予定です。この取り組みにより、薬剤師が調剤業務に割く時間を減らし、患者対応や服薬指導といった対人業務に集中できる環境を整えることが目指されています。患者との接点が増えることで、薬剤師が果たす役割が拡大し、医療全体の質の向上が期待されています。
また、医療従事者の働き方改革に関しても具体的な措置が示されています。診療報酬改定を通じて、医療・介護・福祉分野の従事者の賃金が改善されるとともに、業務効率化のためにICT機器や経営協働化の活用が推進されます。これにより、現場の負担軽減と人材不足の解消が期待されます。
医薬品分野では、生産および供給体制の強化が重要な柱として挙げられています。国内外の供給網を強化するために、製薬企業への投資支援を拡充し、新薬の開発や安定供給を確保する体制が構築されます。これにより、パンデミックや緊急事態における医薬品の安定供給が可能となることが期待されています。
さらに、地方での医療サービス拡充も対策に含まれており、買い物や交通、医療といった日常生活に欠かせないサービスの維持・向上が図られます。医療物資の輸送を効率化するためにドローン配送が活用される計画も進行中で、これによって医療供給が迅速化され、地域間格差の是正が期待されています。
今回の総合経済対策は、医療分野のデジタル化や効率化を推進するとともに、医療従事者や患者にとってより良い環境を実現するための取り組みを多岐にわたり展開しています。地域医療の充実や医療分野におけるイノベーションが今後さらに注目されるでしょう。
薬価改定を2年に一度に戻す政策変更については明確な言及なし
今回の総合経済対策において、期待されていた、薬価改定に関する政策変更については、明確に「毎年から2年に一度に戻す」といった内容は含まれていない。2025年度の薬価改定について「イノベーション推進や安定供給確保、物価上昇といった環境変化を考慮し、国民皆保険の持続可能性を見据えた検討が行われること」と明記されるに留まった。
ただし、政策の詳細は今後の検討過程で追加される可能性があるため、引き続き注視していきたい。
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