近年、街なかや駅などでも、オレンジ色の自動体外式除細動器(AED)が設置されているのを多く見かけるようになった。その流れからか、幼児向け知育学習雑誌『幼稚園』が画期的な付録を企画した。2024年10・11月号では,医療機器メーカーの日本光電と協力し,「おやこで! AEDたいけんセット」を提供する。
この付録は,本物そっくりの紙製AED模型で構成されている。30秒の音声ガイダンスに従い,電極パッドの装着や電気ショックボタンの操作を体験できる。さらに,胸骨圧迫(心臓マッサージ)の練習も可能と本格的だ。
【公式】幼稚園 10・11月号ふろく「おやこで!AEDたいけんセット」
なんで幼稚園児でAED?と思うかも知れないが、日本循環器学会の提言によると、学校管理下での児童生徒の心停止事故が年間約100件発生し、AEDが設置されているにもかかわらず、適切に使用されないケースが多数報告されているという。AEDはめったに使うものではないが、使うべきところで使うか使わないかで救命率は大きく変わってくる。
この問題に対処するには、幼少期からAEDの使用方法や設置場所を認識することは大変有用であるのは言うまでもない。
学校内へのAED設置が進展し、不測に生じた生徒の心停止から救命される事例が増えつつある。その一方で、AEDが設置されていたにも拘わらず、それが適切に使われずに失われた命も少なくない。
この画期的な企画を実現した小学館や日本光電の担当者の先見性は特筆に値する。本企画の狙いは,子どもたちがAEDの存在を身近に感じ、その重要性を理解することにあると思われる。また、親子で学ぶことで、大人の意識向上にもつながる点にも注目したい。緊急時に適切な行動をとれるよう、家族ぐるみでの学習が推奨されるからだ。
幼児教育と最先端の医療技術を結びつけるという斬新な発想は、単なる付録の枠を超え、社会全体の救命意識向上に大きく貢献する可能性を秘めている。幼少期からのAED教育という新たな視点は、医療DXの裾野を広げ、将来の日本の救命率向上に寄与するだろう。
comments