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薬局DXニュース解説

2024.09.06

医師偏在是正へ、厚労省が開業抑制と都道府県権限強化を提案

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厚生労働省は、医師の地域間偏在を是正するための新たな対策案を発表しました。この案では、都市部での新規開業抑制や都道府県の権限強化が主な柱となっています。また、新規開業抑制策は、薬局業界、特にクリニックの門前薬局に大きな影響を与える可能性があります。

主な対策案

1.都道府県による偏在是正プランの策定
2.院長に地方での勤務経験を求める病院拡大
3.都市部の開業抑制へ都道府県の権限強化
4.保険医制度の改正を通じた自由診療規制
5.総合的な診療能力を持つ医師の育成
6.地方への医学部の地域枠配分
7.地方の医療機関への経済的支援

開業抑制と都道府県の権限強化

厚労省は、医師が多い地域での新規開業に一定の要件を課すことを検討しています。現在の指針を法制化し、実効性を高めることで、新規開業を事実上難しくする方針です。
また、都道府県の権限を強化し、地域の医療ニーズに応じた開業規制を可能にする案も提示されています。

保険医制度の改正

厚生労働省が提案する保険医制度の改正は、医師偏在是正の重要な施策の一つです。この改正案は、特に若手医師の診療形態に影響を与える可能性があります。

改正の背景
若手医師の自由診療志向:
近年、臨床研修を終えたばかりの若手医師が、保険診療よりも自由診療(美容医療など)に従事する傾向が強まっています。この傾向は、保険診療を中心とする地域医療の担い手不足につながる懸念があります。

主な改正案
1.自由診療への規制強化:
臨床研修直後の医師が自由診療に従事する際、一定の規制を課すことを検討しています。
2.保険医要件の見直し:
日本医師会は、保険医療機関の管理者になるための要件に、保険診療の実績を加えることを提言しています。
3.総合的診療能力の重視:
中堅以上の医師を対象に、総合的な診療能力を高めるための学び直しの機会を提供する計画があります。

改正の目的
1.地域医療の強化:
保険診療に従事する医師を増やし、地域医療の基盤を強化することを目指しています。
2.医師の偏在是正:
都市部の自由診療に集中しがちな若手医師を、地域の保険医療機関に誘導する効果が期待されます。
3.医療の質の確保:
総合的な診療能力を持つ医師を育成することで、地域医療の質の向上を図ります。

想定される影響
1.若手医師のキャリアパス:
臨床研修後のキャリア選択に制限がかかる可能性があります。
2.自由診療クリニックの人材確保:
美容医療など自由診療を中心とするクリニックの医師確保が困難になる可能性があります。
3.地域医療機関の体制強化:
保険診療に従事する医師が増えることで、地域の医療提供体制が改善される可能性があります。

薬局業界への影響

医師の新規開業抑制策は、薬局業界、特に都市部でのクリニック門前薬局に大きな影響を与える可能性があります。

門前薬局への影響
クリニックの新規開業が抑制されれば、それに伴う門前薬局の新規出店も困難になる可能性があります。
またクリニックモールなど薬局主導のクリニック誘致が難しくなる可能性が出てきます。

薬局業界の対応策
1.健康サポート薬局への転換:
地域住民の健康をサポートする機能を強化し、クリニックへの依存度を下げる取り組みが求められるでしょう。
2.在宅医療への参画:
地域包括ケアシステムの中で、在宅患者への薬剤管理や服薬指導サービスを強化する動きが加速する可能性があります。
3.デジタル化の推進:
オンライン服薬指導やデジタル技術を活用した患者サポートなど、新たなサービス展開が求められるでしょう。

医薬連携の新たな形
医師偏在是正策により、地域における医療機関と薬局の連携の在り方も変化する可能性があります。
1.地域包括ケアシステムにおける薬局の役割強化
2.遠隔医療と連動した薬局サービスの展開
3.予防医療における薬局の機能拡大
これらの変化に対応するため、薬局業界も従来の業態にとらわれない柔軟な事業展開が求められるでしょう。

医療DXにはチャンス到来か?

1.遠隔医療の重要性増大: 地域医療の強化に伴い、遠隔医療システムの需要が高まる可能性があります。
2.診療支援AIの開発: 総合的な診療能力を補完するAIシステムの開発が求められる可能性があります。
3.医師教育プラットフォーム: 継続的な学習を支援するデジタル教育プラットフォームの需要が高まるかもしれません。
この制度の改正は、医療提供体制全体に大きな影響を与える可能性があります。これらの変化を見据えた製品・サービス開発が期待されます。

今後の展開

厚労省は2024年末までに具体的な施策を固め、2025年度予算への反映や通常国会での法改正を目指しています。法制化されれば、医師の地域偏在是正に向けた実効性の高い対策となる可能性があります。
注目すべき点は、これまでの医療政策と異なり、本案を推進しようとしているのが、日本医師会から支持を得ている武見厚労大臣という点です。この点から見ても日本医師会がこれらの対策案におおむね賛同する姿勢を示している事が伺えます。職能団体からの支持が得られていることが、実現可能性を高めています。
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