厚生労働省は、「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を公表した。2026年度からの施行を目指すこの施策は、医師の地域偏在解消を目的とした包括的な取り組みとなっている。
本パッケージの核となるのは、都道府県による「重点医師偏在対策支援区域」の設定だ。この区域は、人口減少以上のペースで医療機関が減少している地域などが対象となる。都道府県は厚生労働省が示す候補区域を参考に、地域の実情に応じて選定することになる。
特筆すべきは外来診療における新規開業規制の強化である。都道府県は外来医師が過多な区域において、新規開業を希望する医師に対し、開業6ヶ月前までに医療機能等の届出を求めることができる。さらに、地域で不足している医療機能の提供や医師不足地域での診療を要請することも可能となる。この規制強化は、門前薬局の新規出店計画にも大きな影響を及ぼす可能性がある。特に外来医師過多区域における診療所開設が制限される場合、薬局チェーンの出店戦略の見直しが必要となるかもしれない。
経済的なインセンティブも導入される。重点医師偏在対策支援区域での診療所開設に対する施設整備支援や、医師への手当増額支援などが計画されている。これらの財源については、保険者からの負担を求める方針が示された。この支援策により、医師不足地域への診療所の出店が促進されれば、それに伴う薬局の新規出店機会の創出も期待できる。
医師の養成過程における対策も強化される。医学部の臨時定員については、地域の実情や都道府県の意見を考慮しながら必要な対応を進める。また、臨床研修制度では、医師少数県等で24週以上の研修を実施する広域連携型プログラムの制度化が2026年度から予定されている。
さらに注目すべきは、開業後の実効性確保の仕組みだ。要請に従わない開業医に対しては、保険医療機関の指定期間を6年から3年に短縮する措置が講じられる。この変更は、診療所の開業場所選定に影響を与えることが予想され、それに付随して薬局業界の出店戦略にも波及効果をもたらす可能性がある。
本パッケージの実効性確保のため、施行後5年を目途に効果検証を行い、十分な効果が得られない場合は追加対策を検討するとしている。医療提供体制の将来を見据えた本格的な改革として、その実現可能性と効果が注目される。
なお、この施策は新たな地域医療構想や働き方改革、オンライン診療の推進等と一体的に進められる予定であり、2040年頃を見据えた医療提供体制改革の一環として位置づけられている。医療機関の配置に関する規制強化は、薬局業界全体の事業計画にも重要な影響を及ぼすことが予想され、業界関係者からの注目が集まっている。
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