長引くコロナ後遺症の一つである「ブレインフォグ」の原因が、脳血管からの微小な漏れである可能性を示す研究結果が発表されました。ダブリン大学トリニティ・カレッジの科学者チームと、慢性疾患や希少疾患の治療・診断・モニタリングのための技術を開発する研究機関であるFutureNeuroの研究チームによる論文が、科学誌「Nature」に掲載されました。
Blood–brain barrier disruption and sustained systemic inflammation in individuals with long COVID-associated cognitive impairment
コロナ後遺症の症状の一つである「ブレインフォグ」のメカニズムとして、血液脳関門 (BBB) の機能障害が重要である可能性を示す研究結果が得られた。
急性期コロナ感染者とブレインフォグを伴うコロナ後遺症患者を対象に、MRI検査で BBB の機能を調べたところ、双方で血液脳関門の機能低下が確認された。また、血液中の免疫細胞の解析では、凝固系の異常と免疫反応の低下が認められた。さらに、実験では、コロナ後遺症患者からの血液を脳内血管細胞に曝露すると炎症反応が誘発された。
これらの findings から、ブレインフォグは持続的な全身性炎症と局所的な血液脳関門の持続的な機能障害が重要因子であると考えられる。
ブレインフォグは、集中力や記憶力の低下、思考の霧がかかったような状態を指します。コロナ感染者の10~20%が罹患すると推定されており、日常生活に支障をきたす深刻な問題となっています。特に医師や薬剤師、看護師など医療職は元々感染リスクが高い上に罹患後、ブレインフォグなどで業務に支障が出て復職が難しい事例が出ています。
今回の研究では、コロナ患者40人と健康な人40人の脳をMRIで比較したところ、コロナ患者では脳内の微小な血管からタンパク質が漏れ出ていることが確認されました。この漏れは、脳の炎症や神経細胞の損傷を引き起こし、ブレインフォグの症状につながると考えられます。
研究チームは、この血管漏れがコロナウイルス自体によるものなのか、それとも免疫反応によるものなのかはまだ解明できていないと指摘しています。しかし、この発見は、ブレインフォグの新たな治療法や治療薬の開発につながる可能性があります。
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