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薬局DXニュース解説

2026.01.26

2026年衆議院議員選挙で薬局はどう変わる?―主要政党の医療・医薬品政策を徹底比較

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自公連立の解消という政治史的転換を経て迎える2026年2月8日の衆院選。各党のマニフェストには、薬局・薬剤師業界の未来を左右する重要な論点が数多く含まれている。OTC類似薬の保険適用除外、オンライン診療の全面解禁、調剤報酬改定の方向性——。本稿では主要10政党の公約を「薬局目線」で読み解き、選挙後に想定される業界環境の変化を展望する。

政治再編が医療政策に与える影響
1999年以来続いてきた自公連立が解消され、公明党と立憲民主党が合流して「中道改革連合」を結成したことは、医療・社会保障政策の議論の枠組みそのものを変えた。これまで公明党が自民党内の社会保障費抑制論に対するブレーキ役を果たしてきたが、その歯止めが外れた形だ。
2026年は診療報酬・介護報酬の同時改定直後という重要な時期にあたる。物価高騰と賃金上昇の波が医療現場を直撃する中、公定価格をどう設定するかが最大の争点となっている。本稿では、薬局・薬剤師に関わる政策を中心に、各党の主張を整理する。

3つの政策ブロック
今回の選挙における医療政策で、筆者は以下の3つのイデオロギーブロックとして分類した。かつての「与党対野党」という単純な二項対決図式では表せなくなり、ある種の三つ巴の戦いとなっているからだ。
経済安全保障ブロック(自民党・日本保守党)
医療を成長産業と位置づけ、公定価格引き上げによる賃上げと医療DXを推進する。国民皆保険制度は維持しつつ、経済成長による財源確保を目指す現実路線だ。
人間主義ブロック(中道改革連合・国民民主党)
医療・介護を基本的権利として保障する立場。新自由主義的な削減に抵抗しつつ、現役世代の負担軽減と高齢者福祉のバランスを模索する。
抜本改革・テクノロジーブロック(維新・チームみらい・参政党・れいわ・共産党)
既存システムの延命を否定し、劇的な構造転換を訴える。ただし、その方向性は維新の「徹底的なコスト削減」から、れいわ・共産の「積極財政による無償化」まで極めて幅広い。
薬局業界に直結する5つの争点
1. OTC類似薬の保険適用除外
最も注目すべきは、日本維新の会が打ち出した「OTC類似薬の保険適用除外」だ。湿布薬、保湿剤、ビタミン剤など市販薬で代替可能な医薬品を公的保険の対象から外し、全額自己負担とする政策で、2026年度からの実施を目指している。維新の試算では、この施策を含む一連の医療費削減策により年間4兆円を削減し、現役世代の社会保険料を1人あたり年間6万円引き下げるとしている。
自民党も方向性としては推進の立場だが、高齢者層の反発を懸念し、段階的な導入を示唆している。一方、共産党やれいわ新選組は「病人に負担を強いるもの」として完全に反対している。

薬局への影響
この政策が実施されれば、処方箋調剤の件数は減少する一方、OTC販売が拡大する。薬局経営においては調剤と物販のバランスが大きく変わり、セルフメディケーション支援体制の強化が不可欠になる。ただし、軽微な症状での受診機会が失われることで、重症化の早期発見という薬局の「見守り機能」が損なわれるリスクも指摘されている。

2. オンライン診療と服薬指導の拡大
チームみらいは、初診からのオンライン診療完全自由化と、薬の配送までをスマートフォンで完結させる「オンライン・ファースト」を掲げている。現在の「対面原則」を「オンライン原則」へとパラダイムシフトさせる構想だ。
自民党も医療DXの一環としてオンライン診療の推進を掲げているが、チームみらいほど急進的ではない。中道改革連合は記述が少なく、人間中心のケアを重視する姿勢から慎重な立場と推測される。

薬局への影響
オンライン服薬指導の普及は避けられない流れだが、完全オンライン化が進めば、地域に根ざした対面薬局の存在意義が問われることになる。一方で、医師不足地域における医療アクセス改善という観点では、薬剤師が地域医療の最前線を担う機会が増える可能性もある。

3. 調剤報酬改定の方向性
薬剤師の処遇改善について、各党のアプローチは大きく異なる。
自民党は「物価連動型の公定価格」を掲げ、診療報酬・調剤報酬を物価上昇率や全産業平均賃金と連動させる方針だ。中道改革連合はさらに踏み込んで、医療・介護従事者の賃金を「全産業平均まで引き上げる」ことを明記している。
一方、維新は医療費削減を優先しており、報酬の大幅引き上げは想定しにくい。むしろタスク・シフティングによる効率化、つまり薬剤師へのさらなる業務移管を推進する立場だ。
れいわ新選組は独自の立場で、介護職と並んで薬剤師などのケア労働者を「公務員化」し、月給10万円アップを実現するとしている。財源は国債発行で賄う方針だ。

薬局への影響
自民・中革連が政権をとれば、調剤報酬は維持ないし微増の可能性が高い。維新が影響力を持てば、報酬抑制と効率化要求が強まる。れいわの公務員化案は実現可能性の面で議論があるが、薬剤師不足に悩む地域薬局にとって、処遇改善の方向性そのものは歓迎すべきものだろう。

4. 医薬品の安定供給と創薬支援
自民党は経済安全保障の観点から、抗菌薬や麻酔薬など基礎的医薬品の国産化、サプライチェーンの強靭化を掲げている。また、ドラッグ・ラグ/ロス解消のため、薬価制度改革や創薬スタートアップへの投資促進を打ち出している。
日本保守党も同様に、医薬品の過度な海外依存からの脱却と国内生産体制強化を主張している。

薬局への影響
後発医薬品の供給不安が続く中、国産化政策は歓迎すべきだが、薬価がどう設定されるかが焦点になる。イノベーションを適切に評価する薬価制度が実現すれば、新薬へのアクセスは改善するが、医療費抑制圧力との兼ね合いが課題となる。

5. スイッチOTCと健康サポート薬局
自民党はセルフメディケーション税制の延長・拡充とともに、スイッチOTC(医療用から市販薬への転用)促進を掲げている。これは前述のOTC類似薬保険外しと表裏一体の政策だ。

薬局への影響
スイッチOTCの拡大は、薬局の健康サポート機能を強化する好機となる。処方箋がなくても、生活習慣病の予防や軽症時の適切な対応を薬剤師が担う体制が求められる。健康サポート薬局の機能がより重要になるだろう。

地域医療構想:11万床削減の影響
表立って議論されていないが、重要な争点が「11万床削減計画」だ。維新と自民党の一部が推進する一方、共産党、社民党、中道改革連合の一部が反対している。
病床削減が進めば、在宅医療や地域包括ケアの重要性が増し、薬局が担う役割も拡大する。訪問服薬指導、残薬管理、多職種連携のハブ機能など、薬剤師の業務は調剤中心から地域ケアの総合支援へとシフトしていくだろう。
薬局はどう備えるべきか
2026年総選挙の結果次第で、薬局業界を取り巻く環境は大きく変わる可能性がある。
自民党が単独過半数を維持すれば、現状の延長線上で緩やかな改革が進む。中道改革連合が躍進すれば、報酬改善が期待できる一方、財源論(増税)が浮上する。維新・国民民主党がキャスティングボートを握れば、OTC保険外しや効率化要求が一気に加速する。
いずれのシナリオでも共通するのは、薬局に求められる機能が「調剤」から「総合的な健康支援」へとシフトしていくことだ。オンライン対応、健康サポート、在宅医療、セルフメディケーション支援——これらの体制整備を選挙結果を待たずに進めることが、これからの薬局経営には不可欠だろう。
各党の公約を冷静に読み解き、自局の強みを活かせる領域を見極める。投票日の2026年2月8日には投票所に足を運びたい。それが、激変の時代を生き抜く第一歩となる。
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