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薬局DXニュース解説

2025.11.07

先発薬の追加負担、さらなる引き上げへ――薬局現場に迫る新たな局面

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厚生労働省は、後発医薬品があるにもかかわらず先発薬を希望する患者の追加負担額を引き上げる検討に入った。2024年10月から後発薬との価格差の4分の1を患者が上乗せして支払う制度が始まったが、今後は価格差の2分の1や全額への引き上げが議論される見通しだ。年末までに具体的な制度設計が固まる方針で、薬局現場にとって新たな説明対応と制度運用の準備が必要となる。

始まったばかりの「4分の1負担」制度
現在の制度では、例えば先発薬が500円、後発薬が250円の場合、差額250円の4分の1にあたる62.5円に消費税を加えた68.75円が選定療養費として患者負担となる。3割負担の患者の場合、従来150円だった窓口負担が200円に増える計算だ。
医療上の必要性がないにもかかわらず患者が先発薬を希望した場合に適用され、医師が医療上の必要性を判断した場合や薬局に後発薬の在庫がない場合は対象外となる。対象となるのは、後発薬発売から5年経過、または後発薬への置き換え率が50%以上の長期収載品で、2025年4月時点で1006品目が該当している。

薬局現場で直面する課題
制度開始から1年余りが経過したが、薬局現場では多くの課題が浮き彫りになっている。特に「医療上の必要性」の判断基準をめぐっては、効能効果の差異、副作用や治療効果の差異の経験、学会ガイドラインの推奨、剤形の問題など複数の要素があり、医師と薬剤師の連携が不可欠だ。
また、患者への説明においても難しさが指摘されている。ある薬局では「これまでにない複雑な仕組みなので、分かりやすい説明、掲示になるように心掛けている」という声も聞かれる。後発薬の品質不安や供給不足問題が記憶に新しい中、先発薬を選択したい患者心理への配慮と、制度の趣旨理解を促すバランスが求められている。

さらなる負担増加の影響は?
今後、上乗せ負担が2分の1や全額に引き上げられた場合、薬局現場への影響はさらに大きくなる。同じ例で試算すると、2分の1の場合は125円(税込137.5円)、全額の場合は250円(税込275円)が追加負担となる。患者の経済的負担が増すことで、後発薬への切り替え相談が増加する一方、経済的理由から服薬アドヒアランスが低下する懸念も生じる。
医療保険財政の逼迫という背景は理解できるものの、薬局薬剤師には患者の治療継続を支える責任がある。特に複数の慢性疾患を抱える高齢者や、経済的に厳しい状況にある患者への細やかな対応が求められるだろう。

薬局薬剤師に求められる役割
この制度変更を契機として、薬局薬剤師には以下の役割がこれまで以上に重要となる。
まず、後発薬に関する正確な情報提供である。品質同等性や安全性について、エビデンスに基づいた説明を行い、患者の不安を解消することが必要だ。また、後発薬メーカーの供給体制や製造管理体制についても最新情報を把握しておくべきだろう。
次に、医師との連携強化である。医療上の必要性の判断においては、患者の服薬状況や副作用歴、アドヒアランスの状況などを医師と共有し、適切な処方選択をサポートする体制が求められる。
さらに、経済的負担への配慮も欠かせない。患者の経済状況を踏まえた上で、後発薬への切り替え提案や、剤形変更による負担軽減策の検討など、個別性の高い服薬支援が必要となる。

制度の行方と薬局経営への影響
国費ベースで100億から250億円程度の財政効果が見込まれており、創薬力強化や後発薬の安定供給策に活用される方針だ。しかし、患者負担の増加が受診抑制や服薬中断につながれば、長期的には医療費増加を招く可能性もある。
薬局経営の観点からは、説明業務の増加や処方変更への対応など、業務負荷の増大が懸念される。一方で、後発薬調剤体制加算の算定要件を満たす取り組みや、かかりつけ薬剤師としての機能強化を進める契機ともなりうる。
制度の詳細設計は年末までに決まる見通しだが、薬局現場としては早期の情報収集と対応準備が不可欠だ。患者の理解と納得を得ながら、医療保険制度の持続可能性に貢献する――この難しいバランスを保ちながら、薬局薬剤師の専門性を発揮することが求められている。
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