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薬局DXニュース解説

2024.10.18

日本麻酔科学会が麻酔薬の不適切使用に対して強い懸念を表明

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日本麻酔科学会は2024年10月16日、静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用に関する声明を発表しました。この声明は、10月14日に配信が開始されたあるバラエティ番組内容を受けて出されたものです。

声明によると、問題の番組では内視鏡クリニックを舞台に、外科的処置を必要としない人物を意図的に朦朧状態にするためにプロポフォールが使用されていたとのことです。日本麻酔科学会は、このような麻酔薬の使用方法に深い憂慮を表明しています。
プロポフォールをはじめとする静脈⿇酔薬は、本来、⼿術や検査時の鎮静を⽬的に、医師の厳重な管理のもとで使⽤されるものです。特に、これらの薬剤は呼吸抑制のリスクを伴うため、必ず⼈⼯呼吸管理が可能な環境で使⽤される必要があります。 この点については、マイケル・ジャクソン⽒の死亡事故などでも広く知られているように、適切な医療管理が⾏われない場合、⽣命に危険を及ぼす可能性があります。 したがって、このような⿇酔薬をいたずらに使⽤する⾏為は、極めて不適切であり、⽇本⿇酔科学会として断じて容認できるものではありません。また、このような使⽤⽅法が誤ったメッセージを国⺠に伝え、⿇酔薬の安全な使⽤に対する信頼を損なうことを深く憂慮しております。
声明では直接言及されていませんが、問題となっている番組は、Amazon Prime Videoで配信中の『KILLAH KUTS』である可能性が高いと見られています。この番組は、人気バラエティ番組『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の演出を手がける藤井健太郎氏が手掛ける新作です。

『KILLAH KUTS』の中でも、特に注目されているのは「麻酔ダイイングメッセージ」と題されたエピソード2です。このエピソードでは、誰かに殺され意識を失う間際に犯人の手がかりを書き残すという状況を、麻酔を用いて再現するという内容が含まれています。
番組では、お笑い芸人たちがペアとなり、一方が被害者役、もう一方が刑事役となって企画に挑戦しています。設定上、被害者役は刺されると同時に麻酔が注入され、意識が途切れる前に犯人の手がかりをメモするというものです。

番組側は、胃カメラの検査の合間にロケを行ったとし、冒頭で《当番組における麻酔の投与は胃カメラ検査を目的とし医師による監修のもと安全性に配慮した上で通常の検査で行われる方法と同時に実施しております》との注意書きを表示しています。

しかし、日本麻酔科学会の声明は、このような麻酔薬の使用方法に深い憂慮を表明しています。声明では、プロポフォールをはじめとする静脈麻酔薬は、本来、手術や検査時の鎮静を目的として、医師の厳重な管理下でのみ使用されるべきであると強調しています。
医療や医薬品は人々の健康と生命を守るために存在するものです。それらを娯楽や視聴率のために軽々しく扱うことは、倫理的にも医学的にも非常に問題があります。このような行為は、医療への信頼を損なうだけでなく、視聴者に危険な行為を模倣させる可能性もあり、社会的な影響も懸念されます。

日本麻酔科学会は、麻酔科医および関連する医療従事者に対し、厳格なガイドラインに従って静脈麻酔薬を適切に管理し、いかなる場合も不適切な使用を避けるよう強く要請しています。同学会は今後も、安全で効果的な麻酔管理を推進し、患者の安全を最優先に考える医療の提供に努めることを約束しています。

医療機関の倫理観と自由診療の在り方にも警鐘

日本麻酔科学会の声明は、医療機関、特に自由診療を行うクリニックに対しても重要な問題提起をしていると考えられます。今回の事例が胃カメラ検査という自由診療領域で発生したことは、近年の一部自由診療クリニックにおける倫理観の欠如を浮き彫りにしています。
自由診療は保険診療と異なり、医療機関の裁量が大きくなる領域です。そのため、より高い倫理観と責任感が求められます。しかし、今回のような事例は、一部の医療機関が利益や話題性を優先し、医療の本質的な目的を見失っている可能性を示唆しています。

医療機関は、患者の健康と安全を最優先に考えるべきであり、娯楽目的のテレビ番組への協力など、医療の本質から逸脱する行為は厳に慎むべきです。特に、麻酔薬のような危険性の高い薬剤を用いる場合、その使用目的と安全性には細心の注意を払う必要があります。万が一事故があれば施術した医師は罪に問われることになります。

テレビ番組や他のメディアからの協力依頼に対しては、それが医療の本質的な目的に合致するかどうかを慎重に吟味すべきです。単なる話題作りや視聴率向上のための協力は、医療への信頼を損ない、ひいては患者の安全を脅かす可能性があります。

医療は人々の健康と生命を守るという崇高な使命を持つ職業です。その信頼と尊厳を守るためにも、すべての医療機関が高い倫理観を持ち、患者の最善の利益を第一に考えて行動することが求められています。今回の事例を機に、医療界全体が自らの役割と責任を再確認し、真に患者のための医療を提供することの重要性を再認識すべきでしょう。
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