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薬局DXニュース解説

2025.02.05

医療費審査のDX化へ大転換、支払基金が組織改革へ ー 職員290人のずさん審査も発覚

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医療費請求の審査を担う社会保険診療報酬支払基金が、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進を柱とした大規模な組織改革に乗り出す。一方で、同基金では職員による不適切な審査実態も明らかとなり、医療費審査の信頼性向上が急務となっている。

社会保険診療報酬支払基金は2025年に「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」へと名称を変更する。厚生労働省は1月30日、この組織改革案を自民党部会で示した。新組織では最高情報責任者(CIO)を新設し、医療分野のDX推進を本格的に担う体制を整える。また、医療情報の安全管理措置の義務付けや、情報漏洩時の厚生労働相への報告義務なども新たに課される。厚生労働相は「医療情報化推進方針」を定め、新組織はこれに基づいた中期計画を策定する予定だ。

この組織改革の発表に先立つ1月28日には、同基金で深刻な不正が発覚した。全国の職員約290人が独自のシステムツールを使用し、レセプト(診療報酬明細書)の審査を形骸化させていたことが明らかになったのである。本来、審査担当職員は1枚ずつレセプトを確認し、審査画面上で確認作業を行うべきところ、自動的に画面を送るツールを使用。一部の職員がエクセルやアクセスで作成したツールが組織内で拡散され、中には外部からダウンロードしたフリーソフトを使用するケースもあった。
自動遷移ツール使用で信頼性に傷
自動遷移ツールは、本来1枚ずつ目視で確認すべきレセプトの画面を一定時間で自動的に切り替えるもので、令和4年6月頃から使用が始まった。290人のうち81人は使用中に離席していたことを認め、そのうち27人は一部のレセプトについて目視確認を怠った可能性があるという。
処分内容は、香川県の職員1名が外部からのフリーソフトのダウンロードと不適切なUSBメモリの使用で停職5日、ツール作成者ら22名が戒告、その他267名が文書注意処分となった。
基金は再発防止策として、USBメモリの使用を全面的に禁止しCD-Rに切り替えることや、ファイルサーバーへのアクセス制限強化などのシステム対策を実施。また、職員への情報セキュリティ研修やコンプライアンス教育も徹底するとしている。
審査の信頼性を損なう今回の不正について、基金は「保険者の皆様や診療担当者の皆様にご心配とご迷惑をおかけした」と謝罪している。なお、ツール使用者と未使用者の査定額実績を比較した結果、大きな差は見られなかったという。
この不正は、医療費審査の信頼性を大きく損なう事態であり、DXによる業務効率化と適正な審査体制の確立という、新組織に課された使命の重要性を浮き彫りにしている。
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