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薬局DXニュース解説

2024.07.29

不当な「抱き合わせ販売」にはハッキリNO!という勇気が必要

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医療機器業界で横行する「抱き合わせ販売」が、公正な競争を阻害し、医療コストの上昇を招いています。公正取引委員会による最近の行政処分を機に、この問題の深刻さと広がりが明らかになってきました。本稿では、この不当な商慣行がもたらす影響と、その是正に向けた取り組みの必要性について考察します。医療の質と患者の利益を守るため、業界全体でこの問題に真剣に向き合うべき時が来ています。

医療機器業界における不当な「抱き合わせ販売」が問題視されています。公正取引委員会が医療機器販売会社に対して排除措置命令を出したことを受け、この慣行の広がりと影響について考察します。
内視鏡洗浄器と消毒液を抱き合わせ販売 公取委が排除措置命令

「抱き合わせ販売」の実態

医療機器業界における不当な「抱き合わせ販売」が明るみに出ました。この事件の中心となったのは、医療機器販売会社「ASPJapan」です。同社は2019年以降、同社が販売する内視鏡洗浄機に関して不適切な販売方法を採用していました。

具体的には、洗浄機に自社製の消毒薬を入れた時しか稼働できないよう機能的な制限を設け、特許が切れた後に販売された安価な他社製のジェネリック消毒薬を排除していたのです。公正取引委員会はこの行為を独占禁止法違反と判断し、「ASPJapan」に対して排除措置命令を出しました。
この行政処分は、「抱き合わせ販売」に関しては26年ぶりのことです。さらに、ジェネリック医薬品の排除を目的とした独禁法違反の認定は初めてのケースとなりました。

元々この内視鏡洗浄器の販売事業は、アメリカの製薬大手「ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)」が扱っていた事業をASPJapan社が2019年に継承したものになります。公取委では、そもそも、この販売手法を始めたのがJ&Jであることも指摘しています。結果的にASPJapan社はそのビジネスモデルも引き継いだ形になりますが、J&Jはすでに事業から撤退していることから行政処分は見送られASPJapan社のみが行政処分を受けることになりました。

なお、ASPJapanは、この命令を不服とし、取消しを求める法的手続きを検討しているとしています。同社は、消毒の十分性を確保し、患者の健康と安全を守るためだったと主張しています。

業界全体の問題

実際のところ、本件は氷山の一角に過ぎません。特に消耗品ビジネスと呼ばれるビジネスモデルは、以下のような問題が指摘されています。

1.純正品以外の使用時で不具合が生じた場合に保証や修理を制限する
2.競合他社を排除する契約を結ぶ
3.医療機関が販売会社の要求に従わざるを得ない状況を作り出す

多くの医療機関は、こうした不当な要求に対して異議を唱えづらい立場にあります。特定の医療機器やサービスは、そもそも選択肢が少なく、競争原理が働かないためコストが高止まりしたり、本体の機器を信じられないほどの値引き額を提示し、割高な専用消耗品を買わせて値引き分を回収するという方法もよく聞く手法です。

多くの医療者は、医学や薬学については専門ですが、機器については専門外であり、特に衛生や安全、品質に関わる消耗品の場合、納入業者やメーカーが純正品以外は保証できないと言われ押し切られるケースも多いのが実情です。

医療機関への影響

筆者が実際に経験したケースで、専用プリンターと称する市販のレーザープリンターのトナーや用紙など消耗品を純正のみと制限し、さらに消耗品の仕入れは初期の納入業者に限定、他の販売店から購入したり互換消耗品を使用して不具合が生じたら一切保証しないとした不公平な契約を結ばされていたケースに遭遇したことがあります。費用も2〜3割高額であり、言い方を選ばず言えば、ぼったくられていた事になります。

結果として、こうした商慣習は医療コストの上昇や患者へのサービス低下につながる可能性があり現代ではコンプライアンス上問題があると言ってもよいでしょう。
不当な「抱き合わせ販売」は、医療業界全体の健全な発展を阻害する要因となっています。患者の利益を最優先に考え、公正な競争環境を確保するため、業界全体でこの問題に取り組む必要があります。
医療関係者、患者、そして社会全体が声を上げ、不当な商慣行の是正を求めていくことが重要です。
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