2024年度の診療報酬と介護報酬の改定に関する議論は、少子高齢化が進む日本で医療と介護の持続可能性に不安を投げかけています。物価上昇に伴うコスト増に対応しつつ、医療機関の賃金を適切に引き上げる必要がある一方で、医薬品の薬価を実勢価格に近づけることによる削減効果が、国民負担の軽減という初期の目的からずれた用途である医療機関の報酬増に使われ続けた結果、後発薬の供給不安や新薬の導入遅れといった問題を引き起こしています。
財務省の審議会は、経営が好調な診療所の報酬単価を5.5%下げることを提案していましたが、この提案は政府の最終決定には含まれませんでした。さらに、与党議員からの報酬増の強い要求に押され、国民負担の抑制と従事者の賃上げのバランスをとることが困難になりました。結局のところ、今回の改定では、施設や職種別に収支や人材状況を精査し、報酬の再配分を最適化することが求められながらも、これが実現されず、国民負担の増加や歳出改革の必要性が軽視されたと感じています。
このような状況は、改革意欲が不足しています。DXの本質は改革にあります。デジタルは改革の一手段にすぎません。改革ができない国であることを再認識する残念な機会となりました。
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