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薬局DXニュース解説

2026.03.30

敷地内薬局、転換点を迎える――報酬半減・特例廃止が問い直す「薬局の立ち位置」

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2016年に解禁されて以来、600店超まで拡大した敷地内薬局が岐路に立っている。厚生労働省による調剤報酬の段階的引き下げと特例廃止を受け、薬局チェーンによる新規出店見送りや既存店撤退の検討が相次ぐ。この動きは単なるビジネス上の再編にとどまらず、「薬局はどこにあるべきか」という本質的な問いを薬剤師に突きつけている。

何が起きているか――報酬構造の変化を整理する
敷地内薬局に対する調剤報酬は、2019年度の110円(患者1人あたり)から段階的に引き下げられ、2024年度には50円まで圧縮された。通常薬局の190〜450円と比較すると、その差は歴然である。
さらに、同一建物内に複数の診療所が入居している薬局に通常報酬を認めてきた「特例」も廃止が決定した。有識者会議では一部薬局が診療所を意図的に誘致していると問題視する声が上がっており、制度の抜け道として機能していた側面が否定できなかった。
この結果、「利益を出すのが難しい」と複数の薬局チェーン幹部が認めるほど、収益環境は悪化し、新規出店見送りだけでなく、既存店の撤退検討にまで発展している。

なぜこうなったのか――制度設計の矛盾と揺り戻し
そもそも敷地内薬局は、高齢患者の移動負担を軽減するという明確な社会的ニーズに応える形で解禁された経緯がある。日本薬剤師会によれば2025年5月時点で613店舗が存在し、患者・医療機関双方に一定の利点をもたらしてきた事実は否定できない。

一方で厚労省は当初から、医師の処方を適切にチェックするための「医薬分業の精神」として、医療機関と薬局の立地・経営の分離を求めてきた。利便性優先で設けた特例が結果的にその原則を形骸化させたとの判断が、今回の一連の見直しの背景にある。制度の矛盾が修正局面を迎えたといえる。

薬剤師として何を読み取るべきか
厚労省が敷地内薬局を締め付ける一方で推進しているのが、複数医療機関の処方薬を一元管理し、相互作用チェックや健康相談を担う「かかりつけ薬局」の仕組みである。東京薬科大学の益山光一教授も「自宅近くにかかりつけ薬局を持つ方が患者にとってメリットが大きい」と指摘している。

政策の方向性は明確だ。「処方箋を捌く窓口」としての薬局から、「患者の薬物療法を継続的に支える拠点」へ——その転換を促す誘導が、報酬設計に反映されている。
薬剤師にとって今問われているのは、立地の優位性に依存せずに患者との継続的な関係をいかに構築するか、という点である。服薬管理の一元化、アドヒアランス支援、生活習慣へのアプローチ。これらを実践する薬局こそが、次の制度設計で評価される存在となる。
転換期を「チャンス」に変えるために
敷地内薬局を巡る今回の政策転換は、薬局経営の在り方を根本から問い直すものである。しかし同時に、薬剤師が「処方箋の受け皿」を超えた専門職としての価値を示す機会でもある。地域に根ざしたかかりつけ薬局の機能強化こそが、患者にとっても、薬剤師自身にとっても、持続可能な未来への道筋となる。
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