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薬局DXニュース解説

2025.02.03

企業内診療所の価値を再評価する − 企業内診療所とオンライン診療の融合がもたらす未来

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近年、一部では企業内診療所を廃止するべきだという議論が見られる。しかし、産業医業務と診療業務という複雑な役割を担う企業内診療所には、従業員と企業双方にとって重要な価値がある。特にオンライン診療の活用が進む中で、診療所の機能を見直し、効率的な医療提供を実現する新たな形が求められている。

企業内診療所は、従業員の健康維持と医療提供を効率的に行う上で、重要な役割を果たしている。特に、大企業では役員クラスの時間は極めて貴重であり、診療所が社内にあることで、外部の医療機関に赴く必要がなくなるという利点がある。例えば、事前に受診を済ませ、必要な薬を診療所で準備しておくことで、従業員の業務時間を最大限に活用することが可能だ。

また、企業内診療所では、経営的な観点から無駄な医療を省くこともできる。外部の医療機関と異なり、企業独自の医療ポリシーに基づいて適切な処方や診療を行うことで、過剰な診療を抑制しつつ、必要な治療を迅速に提供する仕組みが構築される。さらに、定期的な健康診断や産業保健との連携により、従業員一人ひとりの健康状態を総合的に管理し、予防医療や早期治療を実現できる点も見逃せない。
米国における企業内診療所の再評価
企業内診療所は、従業員の健康管理と企業の生産性向上に寄与する重要な資産として、再び注目を集めています。米国の職業環境医学会(ACOEM)が発表した2023年のガイダンスでは、以下のような具体的なデータと事例が示されています。

施設内・施設近隣診療所の増加
2020年時点で、従業員数5000人以上の米国企業のうち、プライマリ・ケアを提供する施設内または施設近隣診療所を持つ割合は31%に増加しています。このような診療所は、従業員の利便性を向上させるだけでなく、欠勤率の低下や生産性向上にも寄与しています。
投資収益率(ROI)の実績
診療所を設置した企業は、1.5:1以上の投資収益率を報告しており、経済的にも効果的であることが示されています。こうした診療所は、従業員からの満足度も高く、雇用主にとってもポジティブな評価を受けています。
健康戦略との統合
診療所は単なる医療提供の場にとどまらず、企業全体の健康保護と健康増進の戦略的目標を支える戦術的な役割を果たしています。産業医や健康管理部門と連携し、効率的な従業員ケアを実現するための中心的な存在として位置づけられています。

これらのデータは、企業内診療所が従業員の健康維持だけでなく、企業の持続可能な成長にとっても重要な役割を果たしていることを裏付けています。日本国内でも、同様のアプローチが導入される可能性が注目されます。
近年では、オンライン診療の導入が進んでおり、企業内診療所のあり方も進化している。医師が常駐しないオンライン診療ブースを設置することで、物理的な診療所を縮小しながらも、従業員に迅速な医療サービスを提供できる。この仕組みは、特に全国的に展開する企業や、リモートワークが普及している環境で有効である。

企業内診療所は、単なるコストセンターではなく、企業の健康経営を支える重要な戦略的要素である。産業医や経営層がその価値を再認識し、オンライン診療などの新技術を活用することで、診療所の潜在的な可能性を最大限に引き出すことができるだろう。従業員の健康を守りつつ、企業の生産性を向上させるこの仕組みは、これからの企業医療の新たな標準となる可能性を秘めている。
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