日本の医療法制において、医師には応召義務が課されており、正当な理由なく診療を拒否することは法的違反となる可能性が高い。さらに深刻なのは、医療機関がエビデンスに基づかない陰謀論的な主張を展開し、患者に不安を煽っている点である。
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レプリコンワクチン クリニック お断り」などで検索すると、少なからぬクリニックがヒットする。そして多くはレプリコン型ワクチンについて「自己増殖による危険性」や「シェディング」などの非科学的な懸念を列挙している。しかし、日本感染症学会をはじめとする専門学会は、こうした主張には科学的根拠がないことを明確に示している。
医師の応召義務 - 医療法における基本的責務
医師の応召義務は、医療法第19条第1項に明確に規定されている基本的な法的責務です。同条項では「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定められています。
以下のような事由は正当な診療拒否理由とはなりません
・科学的根拠のない思い込みや偏見
・特定のワクチン接種歴の有無
・患者の社会的属性による差別
・経済的理由のみによる拒否
医療者として特に問題視すべきは、疑問や懸念がある場合に、科学的な検証を行わずにインターネット上やエビデンスレベルの低い情報を鵜呑みにし、それを診療方針の根拠としている点である。医学的な疑問があれば、peer reviewを経た学術論文や信頼できる研究データに基づいて判断を行うのが、医学者としての基本的な姿勢であろう。
さらに一部みられる「差別ではなく区別である」という主張は、科学的根拠を欠いた恣意的な判断を正当化しようとする危険な論理である。医療機関による根拠なき診療拒否は、まさに非合理的な差別に該当する可能性が高くここまで行うとヘイトと見られても仕方がない事態といえる。
厚生労働省は、こうした一部医療機関によるレプリコンワクチン接種者への診療拒否について、重大な問題として認識しており、厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会でも懸念しているとする発言が出ている。しかし、この事態に対しては、単なる状況把握や注視にとどまらず、より積極的で断固とした対応が求められる。
医師法で定められた応召義務は、国民の基本的な医療アクセスを保障する重要な法的要件である。科学的根拠のない言説に基づく診療拒否は、この基本的要件に違反するだけでなく、公衆衛生上の混乱を引き起こす危険性をはらんでいる。
医療専門家には、最新の医学的知見に基づいて診療を行う責務がある。SNSやインターネット上の検証されていない情報に依拠して診療方針を決定することは、医療者としての職業倫理に反する。特に、ワクチンのような公衆衛生に関わる重要な課題について、科学的根拠なく不安を煽ることは、社会的な混乱を招く重大な問題である。
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