塩野義製薬は13日、新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」のグローバル第3相試験の結果を発表した。主要評価項目である15症状の消失までの期間の短縮で、プラセボとの有意差を示すことができなかった。国産初の新型コロナ治療薬として高い期待が寄せられただけに、その結果は大きな落胆を招いた。
ゾコーバは、昨年8月に国内で承認された経口治療薬で、ウイルスの増殖を直接抑える作用がある。ただしその誕生は、国産初の治療薬として輝かしい期待だけではなかった。ゾコーバは2022年7月に行われた緊急承認を求める審議会で一度承認を見送られている。当時、塩野義製薬は事後解析データを提示して有効性を主張したものの、「因果関係を過剰に評価するリスクがある」と委員から厳しい指摘を受けた。
また、政府は早期の実用化に期待し、承認を前提に同社と100万人分の購入契約を結んでいた。しかし、審議会では「データから有効性は推定できない」など慎重な意見が相次ぎ、結論ありきの審議に激怒する委員も居た。
結果的にその後、紆余曲折した後に承認されたものの、契約に基づき政府が買い上げた多くの治療薬は使用されることなく使用期限を迎え7割が廃棄される見込みとなっている。
今回のグローバル第3相試験でも、15症状の改善で統計的な有意差が出ず、国内緊急承認時に指摘された疑念を払拭することが出来なかった。また、期待されていた後遺症の改善効果も確認できなかった。ウイルスの増殖抑制効果は認められたものの、それが直接的な症状改善につながらなかったようだ。
塩野義製薬は「別の解析方法を用いれば有意差があった」と主張するが、疑念の目も向けられている。ある専門家は「統計学的な手法がはっきりしていないのでは」と指摘。「ゴールポストを動かしている印象を持たざるを得ない」と厳しい見方もある。
コロナ禍は収束しつつあるものの、ゾコーバへの期待は大きかった。今後の備えも必要という指摘もあるが、国産治療薬への期待と課題が見え隠れする結果となった。
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