小林製薬 紅麹問題「プベルル酸」健康被害の製品ロットで確認
小林製薬の発表によると、同社の「紅麹コレステヘルプ」など紅麹由来の健康食品の摂取後に、重篤な腎障害や死亡例が発生しています。2024年3月29日現在、4名の死亡と93名の入院患者が確認されています。
問題の原因は、2023年4月から12月の間に製造された一部の原料ロットに、想定外の有害物質が混入していた可能性が高いことにあります。小林製薬は、この物質が青カビ由来のプベルル酸に類似していると発表しています。プベルル酸は天然の抗生物質で、強い毒性を持つことが知られています。
現在、国立医薬品食品衛生研究所が原因物質の特定を進めており、腎毒性との関連も検討されています。小林製薬は製品の自主回収を引き続き行うとともに、補償などについても検討を進めています。
プベルル酸(Puberulic acid)は、青カビ(Penicillium puberulum)から単離された天然化合物で、カルボン酸の一種です。別名としてトリメチルアセチック酸や2,2-ジメチルプロピオン酸とも呼ばれています。以下のような薬理学的特性が知られています。
構造と性質
分子式:C20H30O6
低分子量の有機化合物
化学構造はポリエン環状ラクトン骨格を有する
薬理作用
・抗菌作用
ポリエン環状ラクトン構造に由来する抗真菌および抗細菌活性を示す
作用機序は細胞膜との相互作用による透過性亢進と細胞内外の物質輸送障害
・細胞毒性
培養細胞に対する顕著な増殖抑制効果があり、細胞毒性が強い
作用機序は未だ不明だが、細胞膜傷害や酸化ストレス誘導が示唆されている
・腎毒性
詳細な作用機序は不明だが、近位尿細管上皮細胞に対する障害が報告されている
尿細管間質性腎炎を引き起こす可能性が指摘されている
体内動態
経口投与後の吸収、分布、代謝、排泄に関するデータは乏しい
化学構造から経口吸収性は低いと推定されるが、長期連用時の体内蓄積は未解明
プベルル酸は強力な抗菌作用を持つ一方で、細胞毒性と腎毒性のリスクが指摘されている化合物です。紅麹サプリメント中の不純物として検出されたことから、健康被害との関連が懸念されています。今後、詳細な薬理評価と曝露実態の解明が重要となります。
2021年: 小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」の販売が開始される。
2016年~2023年: この間、健康被害の報告はなかった。
2023年9月以降: 製造された「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人に健康被害が偏って発生していることが明らかになった。
2024年3月27日: 小林製薬が、「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した後に2人が死亡し、106人が入院したと発表した。
2024年3月28日: 小林製薬が新たに2人の死亡を発表し、合計4人の死亡が確認された。
2024年3月29日: 小林製薬は、去年4月から12月にかけて製造した紅麹の原料に想定外の成分が含まれていた可能性があると発表した。この成分は青カビから作られるものに似ているという。
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