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薬局DXニュース解説

2024.01.30

〝薬局オートメーション市場は世界中で拡大予測〟を読むための視座

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SDKI Inc.(本社:東京都渋谷区)が2024年と2036年の予測期間を対象とした「薬局オートメーション市場」に関する調査を実施。そのレポートが公開されている。

薬局オートメーション市場の発展、傾向、需要、成長分析および予測2024ー2036年 https://www.atpress.ne.jp/news/382153

SDKI Inc. さんのプレスリリースからです。


ここのところ、薬剤師界隈で以前にもまして耳目を集めるようになった感のある薬局オートメーション市場の発展が、2016年設立の米国系調査会社のレポートによって予測されたとのこと。

そのCAGR(複利の市場成長率)は約9.11%(2023-2036対象)と、前回本サイトで紹介した散剤鑑査に用いるラマン分光技術の数値が別の調査会社では7%であった(https://pharmacydx.com/news/899)ことを鑑みれば、見通しは良好と目されていることがわかります。

因みに私は(時期は別として)将来、調剤業界に取り入れられていく新技術のCAGRは10%以上、講演で取り上げるのは20%を目安にしているのですが、薬局オートメーション市場に既に存在する調剤機器市場が含まれていることを考えれば、9%台は非常に大きな成長性だと言えるでしょう。

さて、このレポートのリリース記事によれば、市場成長の最大のエンジンは〝調剤ミス〟や〝投薬ミス〟を挙げているように見えます。確かに動機付けとしてはベネフィットを得ること以上に、ネガティブを回避することの方が強くなりがち。

その一方で〝薬局技術者と薬剤師はさまざまなシステムを学習して適応する必要があり、トレーニング費用の増加、実装時間の長期化、不慣れによる潜在的なエラーにつながります。〟とも指摘されています。そう考えると、基本的な操作・動作に関わる表現やボタンイメージ等は、すべてのメーカーで統一する動きがあっても良いのかも知れません。

シャンプーとリンスの容器が目を閉じていても識別できる工夫をいち早く取り入れた花王が、業界全体で普及しないと消費者が混乱すると考え、実用新案を取り下げてまでJISや国際規格化まで持ち込んだ話を思い出させます。(花王 | シャンプーのきざみに込められた思い (kao.com))

企業固有の資産とすべき着想こそ知財で確保すれば良いのですが、公共財として社会全般に共有すべきこととは分けて考えた方が良いでしょう。例えばこの業界でいえばNSIPSは先見の明があったのだと思います。公平な立場の団体が有することで、機器間のプロトコルを業界全体に資する共有財産にしたわけですから。いま、進んでいる外部委託議論だって、標準の通信プロトコルを整備することで間違いや無駄の解消に繋がります。

あと、定量調査主体だと思われる同レポートでは読めない要素があるとしたら。そのひとつは〝ワンドーズ・パッケージ(ODP)〟だろうと想像しています。ある意味、一包化は日本オリジナルのガラパゴス的な手技と言えるかも知れません。しかし、少子高齢化とアドヒアランス改善は先進国で共通の問題。時間をかけて静かに錠剤分包機が世界中に拡がりつつある事象は、捉え切れていない可能性が高いです。日本の〝ODP〟はガラパゴスではなく、デファクト・スタンダードにだってなり得るのです。

話が逸れました。薬局オートメーションは調剤ロボットに限らず、様々な領域で進みます。中にはこれまで目にしなかったようなサービスもあるでしょう。裏を返せば〝薬局〟というフォーマットに寄せられる期待が大きいということだと捉えています。

追記;本紹介記事のうち〝日本市場のトップ5プレイヤー〟については、違和感があります。本体が日本なだけで実際は欧米市場分がカウントされたであろう企業や、ロボット化を進めている大手薬局を傘下に置いた企業は、このランキングに相当するものではないと考えます。逆に抜け落ちているプレイヤーもありそうなのは、業界外視点かつ米国調査会社の限界点かも知れません(但し、決してデータの価値自体を否定するものではありません)。
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