【経団連】オンライン営業に特化した薬局業態の容認を要望/「従来発生していたコストの削減と、より多くの事業者による市場参入が期待できる」
https://www.dgs-on-line.com/articles/2274
ドラビズon-lineさんの記事からです。
まずは記事タイトル後半をふたつに分解して考えてみます。
「従来発生していたコストの削減」
これは時間・設備・人員において無駄を削減できるなら、生産年齢人口比率が下がり続ける今後の社会において、受け入れるべき観点でしょう。
「より多くの事業者による市場参入が期待」こちらはどうでしょう?一見良さそうにも思えますが、これだけ薬局の数が多いと言われているなか、もう増やさなくても良いのでは?いや、それよりも気になるのは「質」です。発信元が経団連さんですから、収益を上げる力はあるものの、儲からないとなったら簡単に切り捨てるビジネスライクに過ぎるシーンの懸念。医療提供には公的マインドが必要だと考える私には、正直いって疑念はぬぐい切れません。
元来、経団連さんの資料にはオーバートークも散見されます。例えば、2022.1.29付けの「規制改革要望調剤業務の外部委託化について*」のP9では、「一包化等の機械による合理化が進む中で、中小薬局が独自に対応することは困難 例) 一包化業務の機器は約1500万円、その監査のための機器も約1500万円」としています。錠剤分包機1台と鑑査支援装置1台で、なんで3,000万円もするのでしょうか?こちらに関しては厚労省のWG時に私は指摘しましたが、印象には残らなかったようです。(残念)
さりとて、オンライン薬局的なるサービス、米国等では随分と浸透してきているようです。浸透するからには、きっとそれなりのメリットがあるはず。それが日本社会・生活者ひとりひとりの風景に馴染んで役立つのか?を冷静に見つめる必要がありそうです。
なんと言ってもお薬を取りに行かなくて良いので、患者側の手間は省けます。彼の国でもコロナ禍で需要が拡大したのは、感染対策の意味も大きそうです。加えて忙しいビジネスパースンにとっても便利でしょう。でも実は、薬剤師さん側にとっても「作業」に追われ過ぎず、専門的な勉強の時間を取れる、その知識を活かすべき患者へのカウンセリング時間も増やせるメリットがあるでしょう。
オンラインの面談が有効な医療シーンも存在しているようです。例えば、精神科医療が対面医療に対して非劣勢であるとのエビデンスも、海外のジャーナルには出て来ています**。それならば、薬局でもオンラインを使って有効な服薬指導が出来そうです。
いや、服薬指導(カウンセリング)は対面の方が良いに決まっている!との声が聞こえてきそうです。そう、確かにリアル対面でないと気付かない点があることは事実です。表情を見て、動作を見てわかること。患家を訪問してお宅にあがって初めてわかること。間違いなくあります。人とリアルで会う、適度に身体を動かすことの大切さ。
ここは結局、ケースバイケースではないでしょうか。少なくとも使い道はありそう。従って前提として、人口分布や薬局立地において、アメリカと日本の密度が根本的に違うことを念頭におき、適切なフィーも含めてどう全体をデザインするかの勝負なのでしょう。
患者によって、或いは同じ患者でもその時のシチュエーションによって、オンラインか対面かは適切に使い分けられたら良いと思います。「一律」の強迫観念は手放すべきです。
既存薬局サイドは「対面」の力を信じて磨けば、オンライン患者も付いてくるでしょう。
経団連サイドは、どうかオーバートークだけは控えていただきたい。そう思います。
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https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2112_03medical/220119/220119medical_0101_01.pdf
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https://mental.jmir.org/2023/1/e44790
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