3校目の募集停止――何が起きているのか
学校法人城西大学理事会は、千葉県東金市に拠点を置く城西国際大学薬学部医療薬学科について、2027年度以降の学生募集を停止すると発表した。同学科は2004年度に開設され、2006年度からは6年制課程に移行。超高齢社会や国際化に対応できる薬剤師の育成を掲げてきたが、受験環境の変化と薬学系学科への志望動向の変容を主な理由として、発展的な再編を見据えた決断に至った。
募集停止はこれで3例目となる。姫路獨協大学が2025年度、医療創生大学が2026年度にそれぞれ募集を終了しており、私立薬学部を取り巻く環境の厳しさが浮き彫りになっている。
なお、在学生への影響については、2026年度までの入学者全員を対象に現行の教育環境を維持し、国家試験対策・進路支援を含む学修サポートを卒業まで継続するとしている。
データが示す私立と国公立の「二極化」
文部科学省が公表した「薬学部における修学状況等 2025年(令和7年)度調査結果」は、薬学教育の現状を端的に示している。
2025年度入試を実施した国立大学薬学部14校では、6年制学科の定員充足率が104.1%、薬剤師国家試験合格率は90.6%。公立大学5校でも充足率101.9%、合格率88.2%と安定した水準を保っている。
一方、私立大学61校では充足率91.2%、合格率84.2%と、国公立との差が顕著だ。しかも「私立」とひとくくりにしても、大学間のばらつきは極めて大きい。充足率・合格率ともに高水準を維持する大学がある一方で、定員を大幅に割り込み、国家試験合格率が低迷するケースも少なくない。
この「平均値」の裏にある格差こそが、今後の再編加速を示唆している。
薬局・薬剤師が受け止めるべき3つの含意
① 採用市場の「質的変化」に備える
薬学部の統廃合が進めば、薬剤師の新規供給は量的には漸減しつつ、質的には二極化が進む可能性がある。合格率・充足率の高い大学出身者への集中と、低水準大学出身者の実務適応支援コストの増大という双方向の変化が同時進行する。採用時のスクリーニング基準や入職後のOJT設計を再点検する機会といえる。
② 地域薬局の人材確保リスクが高まる
城西国際大学は千葉県東金市という地方都市に立地しており、地域の薬局・医療機関にとっての人材供給源であった側面がある。地方立地の薬学部が相次いで撤退すれば、都市部以外での薬剤師確保はさらに困難になる。地域薬局の経営者・管理薬剤師は、大学との関係構築や奨学金制度の整備など、中長期の採用設計を前倒しで検討すべきだろう。
③ 「薬剤師の価値」の再定義が求められる
志望者数の減少と大学の撤退が連動して進む背景には、薬剤師という職業のキャリアイメージに対する若年層の見直しがある。実務の高度化(薬物療法の個別最適化、対物から対人へのシフト、タスクシェア・タスクシフト)が進む現在、薬剤師としての専門性をいかに発揮・発信するかが、職業の魅力向上と優秀な人材確保の両面で問われている。
薬学部の募集停止は、医療者にとって他人事ではない。薬剤師の養成体制が変われば、5年後・10年後の医療現場の人員構成が変わる。現場薬剤師・薬局経営者には、この構造変化を先読みしたうえで、採用戦略・人材育成・職場の魅力づくりを今から仕込んでおく視点が求められる。淘汰の波は、薬学教育をより強靭にするための「選別」でもある。その先に何を描くかは、現場にいる私たちにかかっている。
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