症例概要
患者:20代女性
主な症状:発熱、咳、鼻汁、結膜充血、コプリック斑
ワクチン接種歴:2回
発症日:3月18日
海外渡航歴:なし
感染曝露の可能性がある場所
3月17日(月)12:00〜20:00頃
第一ホテル両国 1階
ワクチン接種歴が2回あるにもかかわらず感染が確認された今回の事例は非常に憂慮すべき状況です。ワクチンの効果減弱要因はいくつか考えられますが、接種時の保存状態が重要な論点です。温度管理が不適切な場合、ワクチンの力価が低下し、十分な免疫獲得ができない可能性があります。過去の集団接種時代には、あらかじめ注射器に吸引したワクチンを室温で放置しているケースも散見されました。
また、2回接種を完了していても修飾麻疹として発症するケースがあることは、現場の医師からも報告されています。過去の事例においても一定数の2回接種者での発症が確認されており、「100%大丈夫」という説明は避けるべきでしょう。
感染対策の観点からは、たとえ2回の予防接種歴があっても、空気感染対策を緩めることはできません。この点は医療現場において特に留意すべき事項といえます。
薬局での対応について
1.麻しんを疑う症状を訴える来局者には、公共交通機関の利用を避け、必ず事前に医療機関へ連絡するよう指導してください。
2.特に発熱、発疹、咳、鼻水、目の充血等の症状がある患者に対しては、適切なトリアージと感染拡大防止措置を講じてください。
3.予防接種歴に関わらず、麻しん感染の可能性について注意喚起を行いましょう。
私たちは日々、科学的根拠に基づいた医療情報を提供する立場にいますが、今回のような事例は「絶対」という言葉の使用に慎重になるべきことを改めて教えてくれます。ワクチンの効果と限界の両方を正確に伝えることで、患者さんの信頼を維持していきたいものです。
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