政府は毎年の薬価改定によって、社会保障費の抑制を図ってきました。しかし、この制度のもとで、特に後発医薬品の薬価が10年で半値近くに下がるなど、過度に引き下げられてきました。
この結果、国内の製薬企業の収益が圧迫され、国際競争力の低下にもつながっています。一方で、外資系企業の中には、採算が取れなくなったため、新薬を日本市場で売らない「ドラッグロス」という事態も起きています。
薬価デフレ、後発薬は10年で半額 つじつま合わせのツケ
後発医薬品は、全医療用医薬品の約半数を占める重要な存在です。しかし、薬価の過度な引き下げが続けば、企業の利益が著しく減少し、供給の継続が危ぶまれます。
医療は国民生活に欠かせないインフラであり、医薬品の安定供給が何より重要です。したがって、適正な利益が確保できる持続可能な市場構造を整備することが不可欠となります。競争環境は維持しつつも、企業の収益性にも配慮する必要があります。
薬価引き下げは、医療費抑制の手段の一つに過ぎません。抑制を過度に追求すれば、医療提供体制の根幹が揺らぐリスクがあることを認識すべきです。
持続可能な社会保障制度を構築するためには、医療費のみならず、診療報酬の在り方、制度の効率化、規制緩和と医療DXのさらなる推進で聖域なく改革を重ねていく姿勢が求められます。抑制一辺倒の発想からの脱却が課題となっています。
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