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薬局DXニュース解説

2024.02.02

AIは当面雇用を奪わない? カギとなるのは〝タスク〟という概念

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当面のあいだはAIを導入するコストは高いため、雇用主が人を雇用し続ける方が経済的--というマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究結果がある。

「AIはまだ高コスト」で当面は雇用を奪わない--MITの研究
「AIはまだ高コスト」で当面は雇用を奪わない--MITの研究
https://japan.cnet.com/article/35214274/

CNET Japan さんの記事からです。


AIやロボットが人の仕事を奪うのではないのか?という懸念があることについては、いつも私たちの心中を穏やかにしない響きがあることを示唆しています。

もともと〝奪う〟か〝奪わない〟か?というデジタルな捉え方をするのが乱暴なのではありますが、二元論的な捉え方をしてしまうと、〝奪う〟タスクはあるに決まっているのです。いま〝タスク〟と書きました。〝職種〟ではありません。ここがこの記事の要諦だと思うのです。

記事ではパン屋さんの職人が例示されていますが、薬局に置き換えてみれば、例えば〝薬剤師の仕事〟≠〝錠剤の一包化〟ですね。〝薬剤師の仕事〟>〝錠剤の一包化〟なわけですから、〝薬剤師の仕事〟⊃〝錠剤の一包化〟と表記すべきでしょうか。

2013年にオックスフォード大学のオズボーンが発表した論文(*1)によって、〝10-20年以内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクがある〟と発表されて、世界中で物議を醸したことがあります。その後、この論文には色々な検討が加えられ、メラニーアーンツなどによって不足が訴えられた(*2)そうです。
*1 https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf
*2 https://www.oecd-ilibrary.org/docserver/5jlz9h56dvq7-en.pdf?expires=1706244349&id=id&accname=guest&checksum=378374D7B47E8A83ACA8F3662DF7F8CF

要点は2つです。
1.オズボーン論文はタスクで試算した代替リスクを上位概念の職種で判断した。
2.オズボーン論文は代替後の新たな職種の誕生を加味していないではないか。

1.は既に薬剤師にも置き換えたように前述したとおりです。私はいつも、〝AIロボットはシングルタスクだから、タスクボリュームがないとペイしない。それに対して、人はマルチタスクなので少量多タスクにも対応可能。〟と語っています。得手不得手が異なるのですから、施設ごとに異なるベストな組み合わせを検討したいですね。

2.について、薬物治療の設計にまで影響を与え得るAIロボットが誕生してくる未来を考えれば、恐らくそのマシンをお守りする薬剤師が必要になってくると考えています。私はそれを〝デジタル防人な薬剤師〟と呼んでいます。

いずれにしても、「テクノロジーの発展が止まることだけは無い」ということを念頭に、過度に怖がることも、逆に甘く見過ぎることもなく、冷静な見識と対応が求められるのだろうと考えます。ある意味、テクノロジーが〝タスク〟を〝奪う〟のは当たり前というか、奪ってくれなければそもそも業務用のAIやロボットなんて必要ない(愛玩AIロボットは除く)わけです。

なぜなら薬剤師の先生方には、これまで以上に超高齢社会環境下でより質の高い薬物治療のサポートのために、新たな時間創出が期待されているわけですから。

で、アーンツ論文では何パーセントの〝職種〟が代替されるリスクありとされたのか?
それが、OECDの21か国平均で約9%と、オズボーン論文のわずか1/5弱だったのです。
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