こちらは日経DIの記事です。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/ganbare/202308/580860.html
【漫画】医薬品在庫管理システムは便利?不便?
在庫に関する悩みは実際に多く聞きます。
その多くが「在庫管理」と「発注」を混在して考えているように思います。広い意味で言うと「在庫管理」は確かに入庫と出庫の把握なので発注も含めた管理と言えますが、システム的には全く異なるものだと思っています。
実際に支援する先で、超アナログな棚卸を経験したことがありますが、医薬品規格数量単位は「個」であったり「重さ」であったり単位にばらつきがあり、これらをExcel等で集計し正確な数字を出すことは非常に困難です。
多くの薬局ではレセコンに標準搭載されている機能や、医薬品卸が提供する安価なシステムを活用していると思いますが、「実在庫」の確認するためのシステムです。利用することで面倒なリスト作成や計算を省くことができます。
このシステム自体は非常にシンプルで、いまは医薬品卸から納品データが自動で入ってきますし、出庫はレセコンで管理することができます。
では課題・問題は何なのか・・・・それは「発注」に関する業務です。
要は適切な発注が出来ていないため、在庫過多や在庫不足が起きるということです。
「システムを運用しているのに問題が起きている」という薬局が多くあります。その理由として「在庫管理のためのシステム」を導入していることが挙げられます。
基本的には、「定量発注」「定点発注」などのシンプルな発注方法になっています。多少の季節変動への対応はありますが、過去歴から持ってきているものでリアルな変化に対応していないと言えます。
また、せっかくのデータに基づく発注をしていても、そこに「感覚」を加えてアレンジ発注する薬局もあります。こうなるとデータ解析は「無」と変わってしまいます。
実際業務を回していく上では商品ごとの在庫回転率(または月数)を把握しコントロールしていくことが必要です。
在庫管理をする上で、少なくとも財務の知識も必要も必要です。よく「キャッシュフローのために月末在庫を絞る」という話があります。
経理に明るい方なら分かると思います、在庫と利益の相関性はなく、波の無い発注をしていれば原則キャッシュフローも安定します。
【売上総利益(粗利益)】= 売上 - 売上原価(医薬品代)
【売上原価】 = 期首在庫 + 当月仕入 - 期末在庫
※在庫量は関係なく、売上を構築するために、出庫された医薬品実数(金額)によって売上総利益(粗利益)は計算されます。
月末絞っても翌月初に大量発注すれば1か月で見たときのキャッシュフローに大きな変化はありません。
1か月の総購入量が一定であれば支払金額は安定をします。(売上が一定であれば)
※財務の話をすると長くなるので、詳細は割愛します。
必要な量として定めているのに対し、在庫を絞るという「イレギュラー」を加えると、これまたデータ解析に不都合が生じます。
※薬価改定前の在庫を絞ることは将来利益(薬価引下)という要因が絡むため否定はしません。
ここ最近ですが、これまでの「在庫を管理するシステム」から、「適切な発注をするためのシステム」を多く見るようになりました。前者は無料または安価ですが、後者はそれなりの価格という印象です。
みなさんの業務でどのような課題を解決したいのか、「管理」に関する課題なのか、それとも「発注」に関する課題なのか。こういった課題に合わせたシステム選択が必要なのではないでしょうか。
薬局の在庫管理は他業種と比べて非常に特殊だと思います。面の処方、お一人様処方、新規の長期投薬、流行病などいくつものイレギュラーが発生します。現状のシステムで全てを完璧に出来るのかというと、道半ばなのかもしれませんが、これからの薬局業務の効率化のために、システム導入をするのであれば、きちんとしたコンセプトを持ち、課題解決に向けて開発出来るシステムに企業へ投資をするべきなのではないでしょうか。
comments