マイナス改定であってマイナスでない、プラス改定
大型プラス改定と当初言われましたが、改定内容を見ると「プラス」より「マイナス」が目立つ改定と言えます。個々の薬局にとってどうだったのかは、その属性や取り組みにより違いが一概に言えませんが、マイナスという声が大きいように思います。それもそのはずで、確かに診療報酬改定率は「+3.09%」でしたが、調剤本体の改定率は「0.08%」であり、適正化項目は医療費(技術料)に対して「▲0.15%」です。
報酬改定に精通していれば、12月改定率発表後には厳しい改定となることは予想できたわけです。しかし、シンプルに厳しい改定だったのかというと、そう簡単に評価できないのが今回改定の特徴です。「+3.09%」の多くは物価高・賃上げ対応に割り振られています。調剤では「調剤ベースアップ評価料」が新設されました。
算定対象となる薬局は、従業員を雇用している薬局です。6万数千軒あるほとんどの薬局が該当するといえます。令和6年度処方箋発行枚数は、8.6億枚。仮に8.0億枚ぐらいに算定されたとすると、約320億円、令和9年は640億円のプラスとなります。これは調剤報酬なので、調剤報酬はプラスだったと言えるわけです。
しかし、算定の条件が「算定額≦ベア額」が必須で、薬局運営の利益にならないことから否定的な意見も多いですが、では前回改定同様に「調剤基本料+4点」とした場合、経営者の方はその増加した報酬の全てを従業員の給与に配分しますか?多分しないですよね。だから、使途を明確にした報酬の設定なんだと思っています。
3月・4月と改定情報への対応で忙しい月日が流れていましたが、それおもGWぐらいで一度落ち着きを見せます。疑義解釈を待たなくてはいけない部分もありますが、原則論で考えればそこまで難しい改定ではななかったように思います。
多くの方が気が付いたように「身動きが取れない」そんな言葉が似あう改定だったのではないでしょうか。
今回は改定概要が求める薬局業界の変化についてまとめていきたいと思います。
小規模乱立・門前依存・増えない技術料が答え
改定に向けた議論の中に「小規模乱立」「門前依存」などの強い言葉が厚労省資料で使われました。これまでと流れが変わったと認識しなくてはいけません。
インパクトがあった「門前薬局等立地依存減算(▲15点)」ですが、過去にも減算措置は「後発医薬品」「未妥結減算」「手帳持参の著しく乏しい」などありましたが、正直、該当する薬局はほとんどありませんでした。
それが今回の減算はどうでしょうか?「新規開設」を主にしていますが、経過措置には既存の薬局も含まれており、いつでも大減算とする準備はできているわけです。
さらには、今回改定でプラスとなった技術料はどうでしょうか。確かに個人在宅はここ数年、そしてこれからの注力ポイントです。一方で対人業務を行う薬局にとって花形である地域支援体制加算は、新報酬「地域支援・医薬品供給対応体制加算」となり、これまで後発医薬品調剤体制加算を算定していた薬局にとっては、▲3点です。
財源がない改定だからこそ、技術料のプラスは難しいです。政府の考える積極的財政支援の対象は、「薬局」ではなく、そこで働く「スタッフ」です。改定ごとにプラス・プラスという声が聞こえますが、プラスにする項目が少ない、かつエビデンスもないかな、次回以降改定においても、プラスは難しく、現状維持がいっぱいではないでしょうか。
改定内容を受け入れて発展的な議論をしよう
今回の改定内容を試算し、多くの薬局から「マイナス」という声が聞こえます。では改定内容に対応し、「復活」することを目指さなければいけないわけですが、その策(報酬)が見つからないのが令和8年度改定の特徴です。
増点された項目はわずかであり、対人業務に関する個別報酬です。影響の大きな調剤基本料加算や調剤管理料の減額分を補填できる報酬はないです。ではどうしなければいけないのか。
保険薬局運営は「処方箋枚数」×「報酬算定額(単価)」です。単価での対応が難しければ、処方箋枚数を増やすことにしか活路はありません。改定内容に対し、個々思うことがあるのは重々承知ですが、とはいえ保険事業は公的保険制度であり、現場がどうしたいかではなく、行政がどうしたいのかが原則です。
令和8年度改定の第1ラウンドまで中医協委員を務められてた医師委員の先生がこのように言っていました。
「やりたい調剤ではなく、やるべき調剤を」「やるべきことは地域医療構想等の施策で示されている」
今回の改定を表す言葉だと思っています。
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