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薬局DXニュース解説

2025.06.12

薬局界激震!OTC類似薬保険適用除外で変わる調剤業務の未来

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政府が2026年度からOTC類似薬の一部を公的医療保険の適用外とする方針を打ち出したことで、薬局業界は大きな変革期を迎えようとしている。風邪薬や胃腸薬など、市販薬と効能が類似する医薬品が保険適用から外れることで、薬局の調剤業務や経営戦略に根本的な見直しが求められる。

薬価削除による価格高騰の現実
最も深刻な懸念は、保険適用外となった薬剤の価格設定である。現在の薬価制度下では、薬価基準収載により価格が抑制されているが、保険適用除外により薬価が削除されると、製薬企業は自由価格設定が可能となる。これにより、患者負担が大幅に増加する可能性が高い。
特に注目すべきは、慢性疾患患者への影響である。継続的な服薬が必要な患者にとって、月々の薬剤費負担は生活に直結する問題となる。薬局薬剤師は、これらの患者に対する適切な代替案の提示や、服薬指導の充実が求められることになる。

選定療養制度の複雑化と技術料の取り扱い
現在、長期収載品の選定療養制度が導入されているが、OTC類似薬の保険適用除外により、同一処方箋上に100%自己負担の薬剤が混在するケースが増加することが予想される。この場合、技術料(調剤料、薬学管理料等)の取り扱いが重要な論点となる。
2024年10月から導入された長期収載品の選定療養制度では、保険診療と自費診療の併用が認められているが、OTC類似薬の保険適用除外では、より複雑な料金体系が想定される。薬局薬剤師は、処方箋ごとに保険適用薬剤と適用外薬剤を明確に区分し、患者への説明責任を果たす必要がある。

薬局経営への多面的影響
薬局経営の観点から見ると、この制度変更は複数の課題を提起する。まず、在庫管理の複雑化である。同一成分でも保険適用の有無により価格体系が異なるため、より精密な在庫管理システムが必要となる。
また、患者への説明業務の増加も予想される。日本医師会が「重大な危険性が伴う」として反対姿勢を示しているように、医療現場では患者への十分な説明と理解が不可欠となる。薬局薬剤師は、OTC類似薬の保険適用除外について、患者に分かりやすく説明し、適切な選択肢を提示する役割が重要となる。

薬剤師に求められる新たな役割
この制度変更により、薬剤師の専門性がより重要となる。単純な調剤業務から、患者の経済状況や疾患の特性を考慮した総合的な薬物療法の支援へと、役割が拡大することが予想される。
具体的には、OTC医薬品と処方薬の使い分けに関する専門的なアドバイス、患者の経済負担を考慮した代替薬の提案、さらには医師との連携による処方の最適化などが求められる。これらの業務は、薬剤師の臨床的判断力と患者とのコミュニケーション能力を向上させる機会でもある。

技術料の保険適用範囲の明確化が急務
現行制度では、選定療養における技術料の取り扱いが明確に定められているが、OTC類似薬の保険適用除外における技術料の扱いは未だ不透明な部分が多い。薬局薬剤師としては、調剤料や薬学管理料の算定基準の明確化を求めていく必要がある。
特に、同一処方箋上に保険適用薬剤と適用外薬剤が混在する場合の技術料配分方法、患者への説明に要する指導料の取り扱いなど、実務上の課題は多岐にわたる。

今後の展望と対策
2026年度の制度開始に向けて、薬局業界は以下の準備が必要となる。
まず、システム対応の充実である。レセプト電算システムや薬歴管理システムの改修により、保険適用外薬剤の管理体制を整備する必要がある。また、患者への料金説明システムの構築も重要である。
次に、薬剤師の教育・研修体制の強化である。OTC医薬品に関する知識の更新、患者とのコミュニケーション技術の向上、経済的配慮を含む服薬指導の技術習得などが求められる。
最後に、医療機関との連携強化である。処方段階での患者の経済状況や希望の把握、代替薬の提案など、医師との密接な連携が不可欠となる。

OTC類似薬の保険適用除外は、薬局業界にとって大きな変革の契機となる。価格高騰への対応、複雑化する料金体系への対応、患者への説明責任の強化など、多くの課題が待ち受けている。しかし、これらの課題は同時に、薬剤師の専門性を発揮し、患者により良い医療サービスを提供する機会でもある。
薬局薬剤師は、この制度変更を単なる負担増として捉えるのではなく、薬剤師の価値向上と薬局経営の質的向上の機会として活用していくことが重要である。そのためには、早期からの準備と、業界全体での情報共有・連携が不可欠となるだろう。
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