日本製薬工業協会(製薬協)は12月25日、令和7年度(2025年度)薬価改定の骨子について強い懸念を表明した。本改定は、昨年度から転換したイノベーション重視の方向性に逆行するものだとして、製薬業界に大きな波紋を広げている。
製薬協によると、今回の薬価改定では2018年度以降8年連続となる薬価改定が実施されることが決定した。特に問題視されているのは、特許期間中の医薬品についても平均乖離率5.2%(または平均乖離率の0.75倍)を超える品目が改定対象とされる点である。
さらに深刻な問題として、通常の2年に1回の改定ではない中間年改定であるにもかかわらず、実勢価と連動しない「新薬創出等加算の累積額控除」が実施されることとなった。この措置により、医薬品全体で2,466億円の薬剤費削減が見込まれており、製薬企業にとって大きな負担となることが予想される。
新薬創出等加算の累積額控除とは
新薬創出等加算は、革新的な新薬の開発を促進するための制度である。新薬の開発には莫大な時間と費用がかかることから、一定の要件を満たす新薬に対して薬価の加算を認めることで、製薬企業の研究開発投資を支援する仕組みだ。
しかし今回の改定では、過去にこの加算を受けた分の累積額を控除(差し引き)することが決定。これは実質的な薬価引き下げを意味する。製薬協は「研究開発のインセンティブが大きく損なわれる」と強く反発している。
本来2年に1回の通常改定でのみ実施されるはずの控除が、中間年改定でも実施されることになった点も、製薬業界の反発を招いている大きな要因となっている。この措置により、新薬開発に向けた企業の投資意欲が減退し、結果として日本の創薬力の低下につながる懸念が指摘されている。
現在、日本政府はイノベーション重視の国家戦略を掲げ、製薬各社の国内での開発意欲も高まりつつある。しかし、今回の改定内容は、そうした政策の方向性と矛盾するものとなっている。製薬協は特に、この政策によってドラッグラグ(新薬承認の遅れ)やドラッグロス(新薬開発の中止)が加速する可能性を強く懸念している。
製薬協は革新的医薬品の開発を通じて、日本および世界の医療に貢献し続けることを表明している一方で、中間年改定の廃止を引き続き求めていく方針だ。今後、この薬価改定が日本の医薬品産業や医療体制にどのような影響を与えるのか、注目が集まっている。
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