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薬局DXニュース解説

2024.07.05

組織の大小は関係なし!進化するサイバー脅威 ランサムウェアと犯行グループの最新攻撃手法を解説

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近年、医療機関を標的としたサイバー攻撃が急増しています。中でも特に警戒が必要なのが、ランサムウェアによる攻撃です。本記事では、医療機関が直面するランサムウェアの脅威と、効果的な対策について解説します。

増加する医療機関へのランサムウェア攻撃

近年、医療機関を標的としたサイバー攻撃が急増しており、中でもランサムウェアによる攻撃が特に警戒を要する脅威となっています。ランサムウェアは、コンピュータシステムやデータを暗号化し、解除と引き換えに身代金を要求する悪意のあるソフトウェアです。医療機関が保有する機密性の高い患者データや、診療の継続性が求められる特性から、攻撃者にとって格好のターゲットとなっているのが現状です。

今さら聞けないランサムウェアとは?

ランサムウェアは、デジタル時代における最も深刻なサイバー脅威の一つです。これは、攻撃対象のデータやシステムを暗号化し、その解除と引き換えに身代金を要求するマルウェアの一種です。近年では、単にデータを暗号化するだけでなく、機密情報を窃取し、公開すると脅迫する「二重恐喝(ダブルエクストーション)」という手法も頻繁に見られるようになりました。

最近の傾向として、ランサムウェアをサービスとして提供する「RaaS(Ransomware as a Service)」モデルが登場しています。これにより、高度な技術を持たない犯罪者でも、わずかな操作でランサムウェア攻撃を実行できるようになりました。このビジネスモデルは、ランサムウェアの作成者と配布者の間で利益を分配する仕組みになっており、分業化が確立し犯罪ビジネスとしてサイバー犯罪の裾野を広げる要因となっています。

このように、ランサムウェアとその犯行グループの目的や手法は多様化・高度化しており、ターゲットとなる相手には大手や中小といった組織の大小は関係ありません。

犯行グループの目的は?

ランサムウェアを使用する犯行グループの主な目的は、金銭的利益の獲得です。これらのグループは、企業や組織が業務を継続するために重要なデータやシステムを人質に取ることで、高額の身代金を要求します。特に、医療機関や重要インフラなど、システムダウンが人命に関わる可能性がある組織を標的にすることで、身代金支払いの可能性を高めようとします。

さらに、一部のグループは「ノーウェアランサム」という新たな手法を採用しています。これは、データの暗号化を行わず、単に機密情報を窃取し、その公開と引き換えに身代金を要求する手法です。データの暗号化を行わないため発覚するのを遅らせ、長期間にわたりデータを窃取していきます。この方法により、従来のランサムウェア対策である頻繁なバックアップでは防ぎきれない新たな脅威が生まれています。

多くは経済的な目的で活動する犯罪グループですが、中には金銭的目的以外にも、政治的または地政学的な目的を持っている場合があります。国家支援型のハッカー集団が、敵対国の重要インフラを狙ってランサムウェア攻撃を仕掛けるケースなどが報告されています。これらの攻撃は、直接的な金銭的利益だけでなく、社会の混乱や分断、経済的損失を引き起こすことを目的とした情報戦の一つとして活動している可能性があります。

どうやってランサムウェアは侵入するのか?

従来はメールに偽装された添付データを不用意に実行することで侵入するケースが多かったのですが、最新のランサムウェア攻撃では、VPN機器の脆弱性を悪用したネットワーク侵入や、クラウド上のデータセンターシステムを経由した攻撃、さらにはサプライチェーンの弱点を突いた多段階攻撃など、より巧妙で複雑な手法が確認されています。このような状況下で、医療機関はランサムウェアから医療システムを守るための対策を講じる必要に迫られています。

薬局やクリニックなど医療機関は、インターネットと繋がない閉じたネットワークだから外部から攻撃を受けないから安全だ、というある種の"神話"を信じていました。

一方、最近ではオンライン資格認証やレセプト申請、施設間でのデータ共有、またシステムベンダーのリモート保守用などでVPV回線を複数設置していることは珍しくありません。ゲートとなるVPN機器をきちんとメンテナンスしていればよいのですが、経費削減などで保守契約を結んでいないなどの原因でVPNルーターのセキュリティアップデートが実行されておらず、結果として脆弱性として放置され、ハッカーはその脆弱性を突いて侵入してくるわけです。

ランサムウェア対策は重要な経営課題として考える

効果的な対策としては、言わずもがなですが、まず脆弱性管理の徹底が挙げられます。定期的に脆弱性情報を確認し、迅速にパッチを適用することが重要です。また、電子カルテや薬歴などの医療データについては、定期的なバックアップとデータの暗号化を行い、重要データの保護に努めるべきでしょう。

セキュリティ基盤の強化も欠かせません。最新のセキュリティソフトを導入し、常にアップデートを行うとともに、職員向けのセキュリティ教育を実施し、組織全体でのセキュリティ意識向上を図ることが大切です。さらに、ランサムウェア感染時の対応手順を明確にしたインシデント対応計画を策定しておくことで、被害を最小限に抑える準備が整います。

ランサムウェア対策は、単なる技術的対策だけでなく、組織全体でのセキュリティ意識向上が不可欠です。今後は、AI技術を活用した新たな防御システムの導入や、医療機関間でのセキュリティ情報共有の仕組み作りなど、業界全体での取り組みが期待されています。

医療機関の皆様には、患者データ保護と医療サービスの継続性確保のため、ランサムウェア対策を経営課題として捉え、積極的に取り組んでいただくことをお勧めします。サイバーセキュリティの専門家との連携や、最新の防御技術の導入を検討するなど、継続的な対策の強化が求められています。また、万が一の際の補償などに備えてサイバー保険などの加入も必須でしょう。医療の質と安全性を確保するためにも、サイバーセキュリティへの投資は避けて通れない重要課題となっているのです。
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