米国のベンチャー企業ヒュームAI(Hume AI)は、人の声から24種類以上の感情を検出できるAIモデルを開発しています。単に言葉の意味だけでなく、音声の抑揚やニュアンスから感情を読み取り、共感を持った適切な応答を返すことができます。
例えば「家族のペットが死んでしまった」と話しかけると、AIは悲しみの感情を検知し、「ペットを失うのは本当につらいことですね。気持ちよくわかります」といった返答をします。言葉が少なくても、声の抑揚から内面の感情を汲み取る事ができるAIだという。
元グーグルの研究者であるアラン・コーウェンは、2021年に同社を設立し、人の話し方から感情を解釈し、適切な返答を生成する共感型AIを構築した。
筆者はこの技術は、精神医学、特に児童精神医学において、極めて重要だと考えています。児童精神医学では子どもの感情表現を正しく理解することは大きな課題です。特に語彙力が十分に育っていない児童の場合、言葉だけでは本当の気持ち(困りごと)を表せないことがあります。このような問題を解決する手段として、人工知能(AI)による音声からの感情検知技術は大変注目したい技術です。
人工知能を用いた感情検知は、語彙力の乏しい子どもの本当の気持ちを的確に捉えられる可能性があります。ヒュームAI(Hume AI)の技術は、音声の抑揚からニュアンスを読み取り、共感を持った適切な応答を生成します。単に言葉の意味を理解するだけでなく、子どもの内面の気持ちに寄り添えるAIが構築できるかも知れません。
筆者の友人の精神科医の秋根先生のYoutubeチャンネルで児童精神科医の野村先生との対談の中で、日本には児童精神科医がわずか800人程度しかおらず、十分な数が足りていないと述べています。結果的に患者は遠くの病院に何度も足を運ばねばならず、負担になっておりオンライン診療やAI活用も手段の1つとしては有効であると述べています。
また、AIはオンライン診療にも役立つでしょう。オンラインで子どもと対話しながら、AIが感情を検知し、専門家にフィードバックを行えば、リアルタイムで的確な診断とフォローアップも可能になります。
ヒュームAIの技術は、データに基づいた訓練により文化的違いにも対応できるよう工夫されています。さらに外部の高性能AIモデルとも連携し、より高度な応答生成を実現しています。
このAIは既に、心理療法の研究や企業のカスタマーサポートなど様々な場面で活用されつつあるという。語彙力に限界がある子ども専用の対話システムにも応用が期待されています。単に言葉を理解するだけでなく、子どもの本当の気持ちを敏感に感じ取り、寄り添える対話AIは、今後日本語対応も含めて期待したい技術と言えそうです。
・オンライン診療が重要視されており、対面診療と比べて効果的であるとされている。特に、通院の手間や遠隔地からのアクセスに対応する点で利点がある。
・AIやチャットボットなどの技術が、児童精神医療のニーズに一部応える可能性があり、その補助的な役割が期待されている。
・一方で、患者や家族の実際の問題と、AIによる診断や解決策が必ずしも一致しない可能性があり、その点に注意が必要である。
・AIの診断に対する信頼度について、専門家の診断よりもAIの方が信頼できるとの認識がある一方で、AIの表面的な返答や情報の信憑性に疑問が持たれている。