スマホの長時間使用は糖尿病網膜症の発症、進展リスク
この記事で紹介されている研究は以下のように実施されている。
◎対象:
2型糖尿病に罹患している18歳以上60歳未満の男女
過去3カ月間の血糖降下レジメンが安定している患者4371人。
(HbA1c>9%、糖尿病網膜症の診断、悪性腫瘍の既往、仕事での1日12時間以上の携帯電話使用、精神障害、重度の腎機能障害がある患者は除外)
◎対象としているスマートフォンの用途:
ゲーム/TikTok/WeChat(メッセンジャーアプリ)/映画鑑賞/読書/オンラインショッピング
◎スマートフォンの使用時間の長さで患者を4群に分類:
1)≦1.5時間/日(n=1101)
2)1.6~3.5時間/日(n=1098)
3)3.6~7.5時間/日(n=1095)
4)>7.6時間/日(n=1077)
◎調査結果:
2012年1月から2020年1月まで眼底写真を毎年撮影したところ、8年間の追跡期間中に1119人が糖尿病網膜症を発症(発症率は25.6%)。
スマートフォンの使用時間が最も短い群1)(≦1.5時間/日)に対し、それ以外の群のリスクを検討した結果、糖尿病網膜症のハザード比は以下の通り。
2)1.6~3.5時間/日:1.19(95%信頼区間[CI]= 1.07-1.31、P=0.040)
3)3.6~7.5時間/日:1.60(95% CI=1.40-1.81、P<0.001)
4)>7.6時間/日:1.85 (95% CI=1.61-2.09、P<0.001)
スマートフォンの使用時間が長ければ長いほど、糖尿病網膜症のリスクが増加することが判明した。
在宅医療においても多くの糖尿病網膜症患者に遭遇する。
糖尿病網膜症患者本人のQOLが低下することはもちろんであるが、その家族の介護負担も増大する。
このように、食事や運動以外にスマートフォンの使用時間と糖尿病網膜症のリスクの関係性が明らかになったことは、患者への介入の手段が一つ増えたことを意味する。
高齢の糖尿病患者において、スマートフォンやタブレット端末を用いて一日中動画を視聴している方もいらっしゃる。確かにスマートフォンやタブレット端末は生活に欠かせない、便利なツールではあるが、その付き合い方を考えさせられるエビデンスのひとつであり、医療・介護従事者においてもエビデンスに基づいた適切な介入が期待される。
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