icon-sns-youtube icon-sns-facebook icon-sns-twitter icon-sns-instagram icon-sns-line icon-sns-tiktok icon-sns-etc

薬局DXニュース解説

2024.05.02

IBD支援アプリ開発が活況 ~その理由はどこにあるのか?

  • facebook
  • twitter
  • LINE

医薬品卸のバイタルネットは東北大学との共同で医師、薬剤師、患者を対象としたチャットツールと教育プログラムを盛り込んだウェブアプリを開発、提供を始めた。慢性の炎症や潰瘍により下痢、腹痛に悩まされる炎症性腸疾患(IBD)の医療体制を強化するのが目的だという。

【バイタルネット】IBD支援アプリ提供‐服薬指導や情報共有に活用
バイタルネット、医師や薬剤師ら連携アプリ 東北大と開発
【バイタルネット】IBD支援アプリ提供‐服薬指導や情報共有に活用
https://www.yakuji.co.jp/entry110080.html
バイタルネット、医師や薬剤師ら連携アプリ 東北大と開発 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC241E50U4A420C2000000/

薬事日報さんと日本経済新聞さんの記事からです。


これらふたつのメディアが報じているのは、IBDという難治性疾患の治療を支援するというアプリの開発。なんでも医師は患者のおかれた状況をよく理解し、患者は説明が難しい自身の体調などに関して、負荷なくスムーズに共有することを助けるアプリだということです。

IBDは共有意思決定 Shared Decision Making(SDM)と呼ばれる患者と医師とによる関係性が求められる疾患。治療選択肢や治療完遂率が患者の生活スタイルや価値観にも大きく影響を受けるからこそ、患者と医師とがともに協奏することが大切なんですね。

その証左ではないですが、いまIBDに関しては支援アプリが色々用意されている(※1) ようで、医師サイドもその知識のアップデートはなかなか大変だと想像します。

そんな中で、今回の記事が報じるIBD支援アプリ〝おくすりあうん〟が提供するのは薬剤師のあり方。医師と患者だけに限定するのではなく、その間にうまく〝薬剤師〟を薬の専門家として配置しているのがポイントです。

IBDのひとつであるクローン病患者の診療経験がある日本在住の消化器専門医に行ったオンライン調査(2018.12-2019.1)では、SDMの認知度が58%で実践率は52%。実践にあたっての障壁として、なんと91%が「時間の不足」、51%が「ツールの不足」を挙げたという報告(※2) があります。

以上のことから、IBDの患者さんと医師とのコミュニケーションは、なかなかに難しい面を含んでいた。そこに〝おくすりあうん〟が「時間」と「ツール」というリソース不足に「薬剤師」の活用という新しい切り口を提供したと言えるのではないでしょうか。

これらの支援アプリが医療の現場でうまく活用されれば、SDMが適合する他の疾患領域でも支援アプリが開発される確率が高まるでしょうし、薬剤師の活用をデザインしたアプリの登場も増えてくるかも知れません。期待したいところです。

(※1) 色々なIBD支援アプリ
IBDノート https://www.ibdstation.jp/ibdnote/
IBDサプリ https://ibd-supli.welby.jp/
IBDサポート https://www.medinew.jp/articles/technology/application/eapharma-ibd-app

(※2) 布谷ら(日本保健医療行動科学会雑誌, 2021)
https://www.jahbs.info/journal/pdf/vol35_2/vol35_2_2_2.pdf
医薬患連携システム『おくすりあうん』スタート 難病IBD患者の医療の質向上へ

医薬患連携システム『おくすりあうん』スタート 難病IBD患者の医療の質向上へ

引用元: 株式会社バイタルネット/国立大学法人東北大学プレスリリース

  • facebook
  • twitter
  • LINE

RELATED